構成・演出◆高橋いさを(劇団ショーマ)
出演◆演劇集団キャラメルボックス/西川浩幸・近江谷太朗・今井義博・坂口理恵・津田匠子・岡田さつき・他

「東北新幹線が乗っ取られた!?」

1994年5月、ショッキングな見出しが夕刊1面トップを飾った。それが、この世界初・新幹線車内演劇”シアターエクスプレス”の第一報だった。結局この第1回のツアーは1200席が完売、チケットが取れなかった人たちは、シアターエクスプレスを取り上げた数々のワイドショーでしか、その世紀の企画をうかがい知ることはできなかった。

そして、今年・1996年。その記念すべき第1回を成功させた、通常の公演の前売り券でさえ入手困難という、超人気劇団・演劇集団キャラメルボックスの再登場が決定した。

時速245kmで疾走する、長さ300mの新幹線の中で繰り広げられる、手に汗にぎる体感アクション演劇『やまびこ67号応答せよ!!』。そして、宮沢賢治の謎を追う、「岩手ミステリーツアー」。旅の緊張感を和らげる、温泉泊。翌日には盛岡市内で「謎解きエンディング・サスペンスシアター」。ひと味もふた味も違う、息付く暇もない1泊2日の東北大陸への旅に、あなたも「乗客役」として参加してみませんか?

(JR東日本パンフレット抜粋)


参加者体験レポート

6月7日、午前10時。上野駅の新幹線発着ホームに、「やまびこ67号」が、ぴかぴかと光るその車体を滑り込ませていました。我らがキャラメルボックスの役者さん達と、スタッフの皆さんと、そして600人のお客さんを乗せて、1泊2日の旅が今まさに始まろうとしています。行き先は岩手。お天気は上々。旅の名は「シアターエクスプレス'96」!待ちに待った、緊迫の、「東北新幹線車内公演」が帰ってきたのです!

<発車、「西川浩二郎と行く、宮澤賢治100周年・みちのく探検ツアー」>

ホームを歩きながら乗り込む車両を探していると、大変目立つ、オレンジ色のスーツを着た女性が、若い男性を連れて歩いて来るのが見えます。なんとよく見ると、津田匠子さんと岡田達也さん!そう思って辺りを見ると、坂口理恵さんが腕時計をちらちら見ながら人待ち顔で立っていたりと、すでにホームでは、発車前からシアターエクスプレスは始まっていたのでした。

新幹線の中には、各車両のツアコン役の役者さん達がお客さんの乗車を待っている様子です。ドキドキしながら目的の号車(8号車)に乗り込むと、「ようこそ!」と迎えてくださるツアコン菅野さん!席の確認までしてくださるのでした。

いよいよ「やまびこ67号」は一路岩手へ向けて、発車。車内放送とツアコンさんのお話で、今回の旅行が、「西川浩二郎と行く、宮澤賢治100周年・みちのく探検ツアー」であることが告げられました。おお、そうして見ると、車内は西川浩二郎の新曲のポスターが張ってあったり、お座敷列車のような飾り付けがされていたり、スタッフの方は、「チーム西川浩二郎」のTシャツを着ていたりと、徹底した凝りようなのでした。発車してしばらくは、浩二郎氏の名曲をBGMに、ご存知演歌歌手西川浩二郎氏(西川浩幸さん)とそのマネージャー岡安(今井義博さん)が各車両に挨拶に回られたり、宮澤賢治に関するクイズを解答したりと楽しく時を過ごしていたのですが、突然流れた車内放送により、状況は一変してしまうのです!!いわく、「この列車を、乗っ取った」!


<事件発生・CAST>

西川浩二郎(演歌歌手)・・・・・西川浩幸
福本五郎(刑事)・・・・・・・・福本伸一(ラッパ屋)
高村(ツアコンチーフ)・・・・・近江谷太朗
坂田(福本の恋人)・・・・・・・坂口理恵
宍戸(プロダクション社長)・・・遠藤みき子
藤吉(みちのく建設社員)・・・・岡田達也
今村(みちのく建設受付嬢)・・・岡田さつき
林田(みちのく建設社長夫人)・・津田匠子
岡安(西川のマネージャー)・・・今井義博
草野(ツアコン/1号車)・・・・真柴あずき
富永(ツアコン/2号車)・・・・細見大輔
吉田(ツアコン/3号車)・・・・石川寛美
横光(ツアコン/4号車)・・・・明樹由佳
萩原(ツアコン/5号車)・・・・中村恵子
高知尾(ツアコン/6号車)・・・関根麻美
尾形(ツアコン/7号車)・・・・前田綾
中原(ツアコン/8号車)・・・・菅野良一
山猫(乗っ取り犯)・・・・・・・粟根まこと(劇団新感線)
オツベル(乗っ取り犯)・・・・・篠田剛
ゴーシュ(乗っ取り犯)・・・・・南塚康弘
ブドリ(乗っ取り犯)・・・・・・大内厚雄
将軍(乗っ取り犯)・・・・・・・田尻茂一(アクションクラブ)


<やまびこ67号、乗っ取られる!>

「あれ?イベントの順番が違うな・・・?」突然の車内放送に、戸惑うツアコン中原さん。
様子を見ようと放送ブースである9号車(ビュッフェ)へ行こうとすると、大男がマシンガンを構えて突然立ち上がった!
西川浩二郎バックバンド殿様ファイブのメンバーだと思われていた男、実は乗っ取り犯グループの一人がすりかわっていたのです(各車両にもちらばっていた様子)。
9号車、放送ブースは、乗っ取り犯リーダーの山猫に占拠されていて、山猫は、乗客600人とみちのく建設社長夫人林田光代を人質に、みちのく建設に5億円の身代金を要求するとのこと!

なんだって〜!?乗っ取り犯人達は、林田夫人の身柄を確保するために、「オレンジ色のスーツ」の女性を探して回ります。乗客一人一人をジロジロとねめつける高圧的な態度に、車内は緊迫。
やがて林田夫人が発見され、犯人グループに引き立てられてやってきました。
あれ?でも、その方は4号車のツアコン横光さんでは・・・?(林田夫人と服を取り替え、入れ替わっていたのです)しかし必死の工作もむなしく、正体はあっさりとバレてしまいました。いらだつ犯人グループ!

特に浩二郎氏のマネージャー岡安は、何度も9号車から脱出し、犯人グループへの反撃を狙い、その都度ひどい目に合わされていました。


<福本刑事、登場>

ところが幸いにも、この「やまびこ67号」には新宿西警察署の福本五郎刑事が乗り合わせていたのです(恋人の実家の両親に挨拶に行く途中だったそうです)。各車両のツアコンさん達と策を練って、犯人一味を拘束に及べば、逆に自分の恋人を人質にとられたり、人質交換といえば逆に犯人の策にはめられたりと、「一体どうなってしまうの?」と息詰まる展開が、出入り口を開け放たれた車両から車両へと猛スピードで繰り広げられました。

最後は、福本刑事を中心に、ツアコンチーフ高村さんや、各車両のツアコンさんの働きにより、犯人グループを取り押さえ、新幹線乗っ取り事件は見事解決!
9号車で人質になっていた恋人りえの元へ駆けつける福本刑事!1号車からの全力疾走は、本当にすごかったです(8号車に来られた時には、足がもつれてました)。
連行される犯人グループに、やんや、やんやの拍手喝采!乗客は、乗っ取り事件が解決したことと、大迫力の演技を見せてくださった役者さんへの感謝とで、惜しみない拍手を送り続けたのでした。


<新たな事件、真犯人は誰?>

新幹線が仙台をすぎた頃(出された軽食のサンドイッチをほおばっていた頃です)11号車(車掌室)で乗っ取り犯人を取り調べていた福本刑事から、車内放送を使って事件の報告がなされました。新幹線の乗っ取りは、実は依頼されたものである、その乗っ取りを依頼したのは・・・西川浩二郎所属「宍戸企画」の社長宍戸である、という衝撃の事実でした。
ところが今度は宍戸社長を取り調べようとした、その矢先。宍戸社長が、10号車(西川浩二郎楽屋)で、遺体で発見されたのです!
鋭利な刃物で胸をさされ、衣装として用意されていた宮澤賢治のマントを上からかぶせられていたのです。
新幹線乗っ取りと何か関わりが?犯人は一体?

マントが浩二郎氏のものであったことから、殺人事件犯人を浩二郎氏と疑う福本刑事。
浩二郎氏は600人の乗客に呼びかけます。自分は犯人ではない、どうか、真犯人を探してくれ、と。手がかりは、宍戸社長が握っていたクロスワードパズル。この中に犯人を示す、重要な言葉が隠されている、と。乗客はクロスワードパズルを手に、岩手の地へ降り立ちます。浩二郎氏の無実を証明するために!


<証言その1、みちのく民俗村>

クロスワードパズルは、訪れた観光地で調べると解答できるしくみになっていました。
まず訪れた「みちのく民俗村」は、広い敷地に、歴史的建造物が復元されているとてもおだやかな場所でした。緑が眩しいすがすがしい屋外で、容疑者にインタビューがなされました。
ここでインタビューに応じたのは、林田夫人、藤吉、高村の3人。
3人とも宍戸社長が殺害された時に、10号車付近にいた人物です。ここでは宍戸社長が林田夫人に3000万円の借金があったこと、みちのく建設が計画していた「賢治パーク」というテーマパークの建設に、浩二郎氏も出資していたのに、その計画がなくなってしまったこと(ゴルフ場になってしまった)や、高村が元みちのく建設の社員であることなどが明らかにされました。
あれ?今藤吉さん、凶器はアイスピックって・・・言った?
鋭利な刃物としか言ってないよ、福本刑事。うーん、あやしい!

インタビューの後、地元の方に「鬼剣舞」という剣舞を見せていただきました。その後自由行動をされている役者さんたちに、直接質問ができる時間が設けられ、乗客達は、おのおの、質問とカメラをもって、役者さんの元に走るのでした。


<証言その2、宮澤賢治記念館>

続いて訪れた「宮澤賢治記念館」。賢治さんといえば「キャラメルボックス」ですよね、「ブリザードミュージック」しかり、今回の「シアターエクスプレス」しかり。クロスワードを解答しながら記念館を見学ののち(ちょうど「銀河鉄道の夜」の生原稿展示が行われていて、大変貴重な体験もできました)、こちらでも容疑者にインタビューが行われました。
ここでインタビューされたのは、坂田りえ、今村みさの2人。この2人が大学の同級生だったこと、今村みさが高村を知っていること、高村と藤吉は、みちのく建設でプロジェクトチームの仲間であったこと、などが明らかにされました。
聞けば聞くほど、全員が何らかの関係があって、全員があやしい!
我々はまたしても、質問とカメラをもって、役者さんの元へ集うのでした。


<西川浩二郎帰還、そして謎は深まる>

「宮澤賢治記念館」から、バスは「ホテル志戸平」へ。2日前にリニューアルオープンしたばかりの大変豪華なホテルでした。部屋はのびのび広く、温泉は2階建て、乙女心をくすぐるゴーシュのレリーフとか、すごく高い天井とか、ふかふかの絨毯とか、本当に贅沢なお宿でした。
夕食は大広間で600人がそろっていただきました。大広間の舞台には「西川浩二郎ミニコンサート」の看板が。しかし浩二郎氏は、今回の事件の重要参考人として警察へ連れて行かれたままなのです。コンサートは取りやめとの連絡にがっかりしていると、やがて福本刑事とともに、西川浩二郎氏が帰ってきました!

福本刑事は舞台上から、新たな事実がわかった、と我々に報告をしてくれました。容疑者と思われている人々(ツアーに客として、もしくはツアコンとして参加されているという形なので、600のお膳の中で役者さん達もお食事されていました)を立ち上がらせ、衝撃の報告です。

みちのく建設の「賢治パークプロジェクト」に関わっていた人物で、自殺をした者がいる。
川上公彦、プロジェクトの責任者。「みちのく建設にではなく、賢治に、ゆずってくださいませんか」と地主達から土地を買い取った川上は、プロジェクトが中止になりゴルフ場にその土地が使われてしまったことが原因で、命を絶ってしまったとのこと。

そのプロジェクトで一緒だったのが、藤吉と、現在ツアコンに転職した高村。当時川上の恋人だったのが、今村。今村の友人、川上とも何度か会ったことがある坂田。賢治が好きで、賢治パークに出資していた西川。ゴルフ場にしてしまった社長の夫人、林田。容疑者全員が、この川上の事件とつながってしまい、更に謎は深まってしまったのです。
林田夫人が福本刑事に「犯人を知っている」と告げますが、結局その場では言えず、座ってしまいました(この時の林田夫人のおどおどした視線。視線の先には・・・)。

福本刑事の情状酌量により、演歌歌手西川浩二郎&殿様ファイブによるミニコンサートが始まりました(「北墓場」「ひまわりブルース」そして、新曲が歌われました)。手拍子で盛り上がっていた時、暗くなった会場から、抜け出す人影が。林田夫人が福本刑事に何か耳打ちをしている?なんだなんだ?なんだろう、また事件の匂いがする。


<林田夫人殺害さる!>

浩二郎氏が舞台で熱唱されていた時、事件は起こりました。浩二郎氏の楽屋で、林田夫人が殺されていたのです。側には銀の懐中時計が落ちていて、それは浩二郎氏所有のものでした。口封じ?それとも浩二郎氏を陥れるための殺害?ともあれ、彼以外の容疑者全員が、その時宴会場から外へ出ていたのです。

アリバイは、ある。しかし・・・。会場では容疑者の関係とそれぞれの証言が記された推理の手引きが配られました。
宍戸社長殺害事件のお互いの目撃証言を元に不審な行動をしている人物を割り出し、その動機を考え、ホテルの夜は更けていくのでした。

明けて翌日、小岩井農場で残りのクロスワードパズルを解答。クロスワードパズルから導き出された答えは、「カムパネルラノタメニ」。「銀河鉄道の夜」、カムパネルラは誰のこと?ジョバンニは?・・・ザネリは?


<岩手県公会堂、事件のすべてが明らかに>

いよいよエンディングイベントです。
自分の推理を書いた紙を入り口で渡して、開演をひたすら待ちました。自由行動で盛岡に散った600人のお客さんが集結するまで、おなじみの前説があり(しかし、かなりの長時間でした。スペシャルバージョンとでもいうか、大変そうでした。面白かったです)、そして、とうとう、事件の真相が解明される時がきました。

舞台上には、パイプイスが数台。それを新幹線の車両に見立てて宍戸社長殺害時の再現がされました。岩手警察の婦人警官とツアコンさん達の協力で、福本刑事の推理が展開され・・・、犯人は、みちのく建設社員藤吉と、断定されました。

新幹線での行動につじつまが合わなかったことがその理由ですが、決定的な証拠は、凶器がアイスピックであると知っていたこと。そしてクロスワードパズルの解答「カムパネルラノタメニ」。みちのく建設(ザネリ)のせいで命を落とした川上(カムパネルラ)のために、藤吉(ジョバンニ)は、5億円という大金を要求したのでした。

川上の恋人今村の父親は、「賢治パーク」のために土地を売った地主の一人で、その土地を取り戻すために必要な金額だったのです。乗っ取りが失敗した時点で藤吉は、依頼した宍戸社長を殺害。心配して後を追ってきた今村が、とっさに宍戸の死体を隠したのも、捜査を混乱させた原因の一つでした。殺害現場に残したマント、銀時計は、いずれも賢治を連想させる物で・・・。藤吉の告白が、泣けました。公会堂はすすり泣きの嵐。そして感動を残したまま、舞台は幕を閉じました。


<終幕の、その後に>

犯人、理由、クロスワードパズル、すべてを当てた人は22人!抽選で選ばれた人々に豪華賞品が送られました!
公会堂で解散ののち、めいめい盛岡駅へ向かいました。日の傾きかけた盛岡の町は、ひどく感傷的で、なんだか胸にしみました。

さてさて帰りの新幹線!あっ菅野さんが8号車に!・・・ということは、まだ、シアターエクスプレスは続いているの?
実は続いていたのです!
発車してまもなく、西川浩二郎とマネージャー岡安が、事件解決のお礼の挨拶に各車両を回り、福本刑事と恋人りえが挨拶に回り、殿様ファイブ(乗っ取り犯人と2役)が楽器を持って歌いながらやってきて、ツアコンチーフ高村が挨拶に回り、福本刑事にあこがれて刑事になると決めた新婚夫婦(岡田達也さん岡田さつきさん)がやってきて、西川浩二郎のおっかけ(津田匠子さん遠藤みき子さん)がやってきて、と、大騒ぎ!無礼講とはまさにこのこと、写真を撮ったり拍手をしたりと、大変盛り上がりました。

ツアコンさんを残し、役者さん達が9号車へ引き上げられて、今度こそ本当に終幕、車内放送を使っての役者さん紹介がありました。拍手拍手で車内放送に応え、最後に各車両のツアコンさんに、目一杯の拍手を送って、1泊2日の「シアターエクスプレス’96」は、幕を下ろしました。

本当に「すべての席が最前列」でした。目の前で繰り広げられるめまぐるしい展開は迫力満点で、見ているこちらも身の縮む思いでした。ミステリーも本格的ですごく面白かった!ホテルも最高だったし、クロスワードパズルで観光地をまわるのも非常に燃えました。
岩手の景色はとても静かで厳しくて、空気は凛と澄んで、すがすがしかったし、そして何より、キャラメルボックスと、2日間、ずっと一緒だったこと!普通の公演なら、2時間きりのキャラメルボックスが、2日間、振り向いても顔上げてもいつでもどこでも、ずっとお芝居してくれてるんですもん!すごく贅沢した気分です。すごく有り難い体験です。戸惑う位に、本当に希有な、大満足の旅でした。参加できて本当に良かった!

文:増田千圭子(旧姓:槇田)←きいとん増田の嫁(^^;;

1996.7.1に書いてもらったものを、今頃になって掲載しました。
すみません……m(__)m


Photo: Kazunori Ito

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