| なりふり構わず、一生懸命に 成井豊
僕は「カッコいい」という言葉が嫌いだ。
カッコいいと評判の人を見ても、何とも思わないし、
他人から、カッコいいと言われたくもない。
(そんなことを言う人は一人もいないだろうけど)
それはたぶん、僕が少年だった遠い昔、
自分はカッコよくないんだ、と気づいた時からだ。
ハンサムじゃないし、足も短い。
おっちょこちょいで、いつも失敗ばかりしている。
こんな僕がカッコつけても、カッコよくなれるわけない。
だから、僕は、僕の人生から、
「カッコいい」という言葉を削除した。
テレビをつけると、カッコいい人が溢れている。
が、大抵は、自分がカッコいいと思い込んでいる人や、
そんなこと全然気にしていませんという顔をして、
実は、やたらと他人の目を気にしている人ばかり。
テレビは人気商売だから、仕方がない面があるとは言え、
なぜみんなカッコばかり気にするのだろうとため息が出る。
まあ、僕の言うことなど、カッコ悪いやつの、
負け犬の遠吠えなのかもしれないが、
日本語には、星の数ほど修飾語がある。
「カッコいい」より素敵な修飾語はいっぱいある。
「熱い」「真剣だ」「誠実だ」「一生懸命だ」「爽やかだ」
僕の仕事は、そんな人たちの物語を書くこと。
だから、今回の物語も、カッコいいやつは出てこない。
僕と同じ、カッコ悪いやつばかり。でも、きっと爽やかだ。
なりふり構わず、一生懸命に生きているから。
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