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KATO's COLUMN 加藤昌史コラム「終わってから読んでください。」

 『彼は波の音がする』または『彼女は雨の音がする』、いかがでしたでしょうか?
 今回の2作品、表向きは「脚本・演出 成井豊+真柴あずき」というクレジットになっていますが、『彼は波の音がする』は成井が、『彼女は雨の音がする』は真柴あずきが、それぞれ初稿を書いています。つまりこれは、男女の脚本家が存在するキャラメルボックスの特性を生かした二本立てであった、とも言えると思います。

 1985年に結成したこの劇団は、当初は成井豊の作品だけを上演していました。それが1993年から女優だった真柴あずきが文学部出身でエッセイの仕事などもするようになったことを受けて脚本家として抜擢、2004年に北村薫さんの『スキップ』を原作にした舞台を上演させていただいてからは「原作もの」も導入、さらに2007年には小説家の恩田陸さんが書き下ろした脚本を上演、など、「小劇場演劇出身の劇団」であるにも関わらずバラエティに富んだ舞台をお届けしてきました。
 なにしろ31年もやってきていますので、時には「これ、キャラメルボックスの名前でやる芝居じゃないんじゃない?」と言われることもありましたが、むしろそういう作品がきっかけでキャラメルボックスに出会ってくださった方も多いのではないかと思っています。
 今日あなたがご覧くださった作品が、あなたにとって大切な時間になったであろうことを願っております。

 さて、今回のゲストのお二人ですが、まず岩代役の武田航平君はチーフプロデューサーの仲村和生の強い推薦でのキャラメルボックス初登場。今まで、数々のゲストをお呼びしてきましたが、ここまで「親和性」が高い人はそうそういなかったのではないかと思います。なにしろ、顔合わせの翌日に稽古場に行った段階で、ゲストがどこにいるのかわからないくらいに劇団員に溶け込んでしまっていたくらいですから。実家が100年続くクリーニング屋さんであることや、少年時代から野球をやり続けてきたことと、何か関連がありそうな気がしますが、初日が開いてからもっと観察していきたいと思います。

 そしてもう一人の『彼は波の音がする』だけのゲスト・福澤朗さん。もう、今さら福澤さんの紹介を僕がするのもどうかと思うのですが、今回の二本立てのタイムテーブルが「???」って感じになった張本人がこの人だった、と言っても過言ではありません。
 そもそも、この公演を企画するにあたって成井が「映画“天国から来たチャンピオン”を題材にした舞台をやりたいから、中年の、どう見ても天使に見えない、それでいてホッとする感じの人をゲストで呼びたい」と提案し、いろんな方を想定したのですが、「福澤さんは?」と成井が言い出し、その場でオファーだけでもしてみることになったのです。
 福澤さんが昨年でフリーアナウンサーになって10周年、というのは知っていたのですが、僕たちとしては福澤さんをフリーにしてしまうきっかけとなった2005年1月の『福澤一座 Dr.TV 汐留テレビ緊急救命室』という舞台を一緒に作って以来、福澤さんと何か一緒に作るということをしてこなかった、ということに気づいていなかったことの方が、驚きでした。
 そして、オファーしたら即「出ます」というお返事をいただきました。
 が、問題はそこからで、なにしろ日曜日18時からの「真相報道バンキシャ!」の生放送レギュラーで、火曜日20:54からの「開運!なんでも鑑定団」の司会にもなったばかりで、他にも数々のテレビ出演を抱える人気者。出てくれるのはすごく嬉しいことではあるけど、スケジュールが空かない場所が増えて公演のタイムテーブルが歯抜け状態になってしまうかも、という事態になってしまったのです。だからと言って、福澤さんとダブルキャストで出演するようなアクの強い……いや、クドイ……いや、暑苦しい……いや、キャラの立った(←もう手遅れ)……俳優は劇団内にはいないし……と困って、成井と製作部が悩み抜いて作り上げた「福澤さんと一緒にやるためのウルトラC」がこのタイムテーブルだった、というわけです。
 主に大阪公演では2本続けてやる日が設定できず、申し訳ありませんでした。

 それほどまでに彼を知る人はみんな大好きな福澤さんですが、もちろん出演していただくにあたって危惧はありました。公演中に大事件が起きたらテレビに行かざるをえないのではないか、放送の収録が伸びたり早まったりしてこちらの本番に間に合わなくなったりするのではないか、など。
 しかし、そんな「危険」は、いつだってあるのです。
 演劇も、「ナマ」ですから。いつなんどき誰が交通事故に遭うかわかりませんし、電車で寝過ごして遠いところまで行ってしまって本番に間に合わなくなるかわからないですし(←そんな人はいない……はず)、宇宙人にさらわれてしまうかもしれませんし(←これは何度もゲストで出てくださっている久松信美さんが遅刻した時のいつもの言い訳)。

 ナマの演劇だからこそ、全国中継の生放送に出演している人が演技をする、という、傍目には「スリリング」に映ることをするのが面白い、と思います。そしてまた、今日『彼は波の音がする』をご覧くださったみなさんには、その魅力が伝わったのではないかと信じています。

 さて、久しぶりに劇団員の退団のお知らせです。
 2005年の『スケッチブック・ボイジャー』を最後に育児休団していた劇団オリジナルメンバーの中村恵子と、その夫で2008年の『ハックルベリーにさよならを』を以来実家の岐阜県に戻って「育児手伝い休団」をしていた篠田剛が、復帰のめどがつかないため、ついに退団することになりました。詳細については、いずれ本人たちからコメントが出ると思いますので、しばらくお待ちください。

 キャラメルボックスの次回公演は、「会いに行くツアー」こと、グリーティングシアター『嵐になるまで待って』。全国11カ所で上演します。そしてその後はなんともうクリスマスツアーです。作品は、クリスマスとは全く関係なく、伊坂幸太郎さん原作の『ゴールデンスランバー』。奇しくも、2014年に上演した『鍵泥棒のメソッド』同様に、映画化された時に堺雅人さんと香川照之さんが出演していた作品です。「キャラメルボックスの原作あり舞台化」の真骨頂をお目にかけられると思いますので、是非お楽しみに!!

[ 2016.7.15. Katoh Masafumi ]
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