KATOH's COLUMN|加藤昌史コラム「観終わってから読んでください。」

演劇集団キャラメルボックス 製作総指揮 加藤昌史

たった今(2017年6月16日)、ロビーで販売している「トーク&フォトブック」のための、『スロウハイツの神様』原作者・辻村深月さんと成井豊の対談が終わりました。


2017年5月21日付けの日本経済新聞に「あの頃の未来」という題名の辻村さんのエッセイが載ったのですが、その内容は「キャラメルボックスの『スロウハイツの神様』舞台化決定がどれほど嬉しかったか」ということだらけ。これほどまでに原作者に喜ばれたのは初めての経験です。ネットで読めますので、「日本経済新聞 あの頃の未来」で検索して、是非ご一読を。
https://goo.gl/aofgtR


辻村さんは高校時代に『俺たちは志士じゃない』(1998年)でキャラメルボックスと出会い、それからずっと観劇してくださってきた、とのこと。トーク&フォトブックの中で語られていますが、なんと成井作品から受けた影響で書いた小説もある、というほど、キャラメルボックスが大好きだったのだそうです。

さらに今回の舞台化についても「台本の第一稿を読ませていただいて、『えーっ、あの台詞をカットしちゃったの?』というのが一つも無くて、使って欲しかった言葉がみんな入っていて驚きました」「これを書いていた頃の自分と同じくらいこの作品に詳しい人がここにいる、っていう感じでした」など、ただただ成井への絶賛の言葉ばかり。


二人の対談をずっと聴いているうちに、成井が劇中の「チヨダ・コーキ」、辻村さんが環に見えてきました。

19年前は山梨県の高校生だった辻村さんが大学に進学し、就職し、作家デビューし、直木賞を取るに至る間も、辛くなったときにはキャラメルボックスを観に行って元気になって帰っていた、ということ。

成井にとっては、2011年の震災後に来場者数が激減して公演規模を縮小せざるを得なくなり、ついに今公演では大阪公演を断念するなど、厳しい運営を迫られていること。そんな成井とキャラメルボックスにとって、辻村さんの熱い言葉は大きな力となり、これからも走り続けていくための大きな励みとなりましたから。


しかしその対談の内容以上にびっくりしたのは、対談の前にメイクをしてもらっていた辻村さんと僕がおしゃべりしている中で、「私、キャラメルボックスは行けばなんとか入らせてくれる、って聞いたのを思い出して、チケットも取ってないのに突然新宿の紀伊國屋サザンシアターに行って、加藤さんに『最後の一人です』って入れてもらったことがあるんですよ」と言われたこと。


2009年の『さよならノーチラス号』のとき、劇場の規模が小さかったせいで毎ステージ完売で、しかし当日券キャンセル待ちのお客様がたくさんいらっしゃったため、僕は場内でキャンセルを募ったりしながらなんとかして全員入りきれるように、と走り回っていたのです。なんとその中に、すでに『スロウハイツの神様』を発表済みで人気作家になっていた辻村さんがいらっしゃったのですね。


当然ですが僕は、その人が「人気作家の辻村さん」だから頑張って「最後の一席」をご案内したわけではなく、全てのお客さんに対してやっていただけのこと。

しかし、もしそのときに「もう完売してますから入れません」とお断りしていたら、辻村さんのキャラメルボックス観劇もそこでストップしていたかもしれませんし、今こんなにフランクにおしゃべりもできていなかったでしょうし、さらに今回の舞台化も、もしかしたら断られていたかもしれません。


1991年の公演『ハックルベリーにさよならを』のキャッチコピー「きのうの僕が きょうの僕を応援してる」というのを思い出しました。


今日誠実に頑張ったことが、きっとまたいつかどこか知らないところで実り、繋がっていくのだろう、と思います。

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キャラメルボックス次回公演は、2014年から始めた「会いに行くツアー グリーティング シアター『光の帝国』」です。2009年に上演時間60分の「ハーフタイムシアター」として上演した作品の主人公たちのドラマを深く描き足し、90分〜120分に拡大して上演する予定です。

原作は、恩田陸さん。今年に入って「蜜蜂と遠雷」で直木賞を受賞、さらに二度目の「本屋大賞」も受賞、と、文学界は「恩田陸イヤー」に。ですので、「便乗商法?!」と思われるかもしれませんが、この作品の上演は昨年から決まっていたんです。本当です。


4回目となる「グリーティング シアター」ですが、キャラメルボックスとしては初めて行く街が五カ所も。西東京で今最も盛り上がっている街、立川。今年真新しいホールが開館したばかりの埼玉県秩父市。静岡県に限りなく近い豊橋市の隣の豊川市。和歌山に出た方が梅田に出るよりはるかに近いという大阪府の阪南市。そして、今回も次回も出演していない劇団員・岡田達也の故郷、鳥取市。

あなたのお友達が、もしグリーティング シアター会場の近所にお住まいでしたら、是非「キャラメルボックスが行くよ!!」と、ひと声おかけください。

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最後に、近畿方面のみなさんにはちょっとショックなことをご報告しなければなりません。

諸事情から、今回の夏の公演を26年ぶりに東京だけにさせていただいたのですが、実は今冬のクリスマスツアーも、現時点では東京しか会場が押えられていません。昨年後半からなんとかできないものかとホールを探し続けてきておりますが、現時点では開催のメドが立っておりません。

しかし、なんとか、1年の終わりくらいは西のみなさんとも過ごしたい、と強く思っています。まだあきらめてはいません。是非、あなたの力を貸してください。お願いします。

[ 2017.6.16. Katoh Masafumi ]