トップページ

加藤昌史コラム「観終わってから読んでください」

演劇集団キャラメルボックス 製作総指揮 加藤昌史

 キャラメルボックス featuring D-BOYS『また逢おうと竜馬は言った』、いかがでしたか?
観終わってすぐのあなたが今一番困っていることが「これ、ダブルキャストでしょ?もう一つの方はどうなの?!」ということだとしたら、迷わずなんとかスケジュールを調整していただき、もう一つのキャストも観てください。絶対に後悔はさせません。断言します。
 今回の「ダブルキャスト」は、正確に言うとキャラtメルボックス用語ではありますが「クロスキャスト」です。このステージで主演の「岡本」と「坂本竜馬」を演じた二人は、もう一つのキャストの方ではケイコの妹・カオリとベタベタしていた新婚の旦那さん「伸介」と、新選組の「土方歳三」を演じます。つまり、今日の伸介と土方が、今度は岡本と竜馬、というわけです。伸介はまだしも、土方が岡本、というのはあまりにもギャップがあるかと思いますが、そこが今回のダブルキャストの狙いでもあります。

 この芝居はこれまで何度もキャラメルボックスで上演してきましたが、主人公「岡本」という役は、劇団史上最も過酷な主役と言われて来て、その過酷さを上回る役は、今でも書かれていないと思われます。なのに何度も上演してきた理由は、そのときどきに「今最も無理をさせて成長して欲しい男優」への大きなハードルだったから。それが証拠に、初代の岡本を演じた上川隆也は、この作品の後、NHKドラマの主役に抜擢されてテレビの世界に巣立っていきました。
 そして今回。自分の劇団の若手を成長させればいいものを、なんと他チームの、すでに映画やドラマで主演するような「売れっ子」の俳優を、しかも二人ダブルキャストで、30年やってきている劇団の演目の中でも最も大変な目に遭わせよう、という企画です。ひどい話ではありませんかっ?!

 今回の『また逢おうと竜馬は言った』のチラシの裏にある脚本・演出の成井豊の文章の書き出しに「?」と感じた方は多かったのではないでしょうか。「今回は久し振りのアナザーフェイス公演です」という書き出し。そんな言葉、聞いたことないし、この公演の冠は「キャラメルボックス featuring D-BOYS」であって、どこにも「アナザーフェイス」なんて書いてありませんし。
 実は、このチラシができる寸前まで、この公演は「キャラメルボックス・アナザーフェイス featuring D-BOYS」と名付けていたのですが、長いし、「アナザーフェイス」なんて言葉、知らない人には関係無い自分たちだけのネーミングだからやめよう、と僕が決めてカットした、という経緯があったのでした。
 しかし、この「よその劇団から複数のゲストをお招きして異文化交流を図ることで、キャラメルボックスの新たな可能性を探究しよう」という「アナザーフェイス」という公演形態には長い歴史があり、実はその原点が、1992年に初演したこの『また逢おうと竜馬は言った』だったのです。

 ◇          ◇          ◇

 「アナザーフェイス」を含め、過去にキャラメルボックスが、他劇団など外部集団(個人)との「異文化交流」をメインにした公演を行ったものには、下記の例があります。

  • ★1992年 アナザーフェイス featuring 劇団ショーマ 『また逢おうと竜馬は言った』
  • ★1993年 アナザーフェイス featuring 劇団ショーマ 『ジャングル・ジャンクション』+『嵐になるまで待って』
  • ★1994年 アナザーフェイス featuring 惑星ピスタチオ 『俺たちは志士じゃない』
  • ★1996年 ファンタジックシアター『ケンジ先生』
    ※田尻茂一さんの「アクションクラブ」から4人のゲストをお迎え。
  • ★1997年 アナザーフェイス featuring TEAM 発砲・B・ZIN 『ブラック・フラッグ・ブルーズ』
  • ★1998年 ファンタジックシアター『ケンジ先生』
  • ★1999年 ファンタジックシアター『怪傑三太丸』
    ※『ケンジ先生』同様、「アクションクラブ」からゲストを5人。
  • ★2006年 チャレンジシアター『俺たちは志士じゃない』
    ※1994年の作品を、マキノノゾミさん演出で、3人のゲストキャストも迎えて上演。
  • ★2007年 チャレンジシアター『猫と針』
    ※恩田陸さんの書き下ろし戯曲を扉座の横内謙介さんが演出。
  • ★2011年 アナザーフェイス featuring 柿喰う客 『ナツヤスミ語辞典』
  • ★2012年 有川浩さん書き下ろし原作『キャロリング』
  • ★2013年 アーリータイムス featuring 劇団鹿殺し 『ジャングル・ジャンクション』
  • ★2014年 ほさかようさん(空想組曲)書き下ろし戯曲『太陽の棘 彼はなぜ彼女を残して旅立ったのだろう』

 そして、これら「キャラメルボックスの公演」以外にも、外部の公演にキャラメルボックスのメンバーが複数で出かけて行って成井が演出する、という例もありました。

  • ★2004年 日テレ開局50周年記念事業 福澤一座『進め!ニホンゴ警備隊』シアターアプル
    ※脚本が、当時日本テレビアナウンサーだった福澤朗さん。その福澤さんを座長とする日本テレビアナウンサー9人と、岡田達也などキャラメルボックスのメンバー4人が出演。
  • ★2005年 福澤一座『Dr.TV 汐留テレビ緊急救命室』サンシャイン劇場
    ※福澤朗さん脚本、成井豊演出で2本目。日テレアナウンサー9人と、キャラメルボックスからまたまた4人出演。
  • ★2010年 明治座『つばき、時跳び』
    ※梶尾真治さん原作の小説を、成井豊の脚本・演出で、なんと商業演劇の殿堂・明治座で上演。福田沙紀さん、永井大さんが主演で、キャラメルボックスからも坂口理恵など4人が出演。
  • ★2014年 Dステ『駆けぬける風のように』
    ※ワタナベエンターテインメントの若手俳優集団D-BOYSによる「Dステ」の10周年記念公演を、成井豊が脚本・演出。ここにも、キャラメルボックスから岡田達也たち4人が出演。

 ◇          ◇          ◇

 キャラメルボックスの代表であり脚本・演出の成井豊は、元・高校教師。そういったこともあって、演出家として良い舞台を作ることはもちろんなのですが、それ以上に、公演を通して出演者たちを成長させたい、という思いがとても強く、アナザーフェイス公演でも、自分の劇団の俳優たちに成長してもらいたいのはもちろんですが、ゲストとして迎えた人たちにも、自分の劇団にいた時には得られなかった体験をしていただき、意外な面を発見してもらったりできたら、と考えてキャスティングをしたり演出をしているように思えます。そして、一度一緒に舞台を作った人たちにはとても愛が深くなり、その後何度となくゲストで出演していただいたりする縁に繋がっていったりしています。
 そんな中で、今回のD-BOYSとのアナザーフェイスは、2014年の『駆けぬける風のように』がキッカケで、2015年の作品『パスファインダー』に陳内将さんに出演いただいたことが後押しとなって実現した企画です。陳内さんを二度演出した成井が、三度目に選んだのが、この劇団史上最も過酷な主人公を彼にやらせる、しかも、最大のライバルであり仲良しでありタイプも全く違う三津谷亮くんとのダブルキャストで競わせる、ということだったというわけです。

 キャラメルボックスのサポーターの皆さんからすると、劇団内にも「大変な目に遭わせたい」と思う俳優がいるかもしれません。しかし、そういうヤツらに過酷な目に遭わせるチャンスはいつでもありますが、成井が「今、背中を押してみたい」と選んだのは今回の二人だった、というのは、今日のステージをご覧いただいてご理解いただけたのではないでしょうか。

 キャラメルボックスは、これからも様々な方々の力をお借りして、長年やってきた経験や実績などは踏み台にしてどんどん「次」に進んで行く「変わらないまま、変わり続ける」集団であり続けたいと思います。
 今日、初めてキャラメルボックスと出会った皆さん、これまでキャラメルボックスを応援してくださってきた皆さん、明日はまた、違う顔をお見せできるはずです。今日の舞台だけで決めないで、これからもこのチームを見守っていってください。よろしくお願いいたします。

 ◇          ◇          ◇

 キャラメルボックスの次回公演は、サマーツアー『彼は波の音がする 彼女は雨の音がする』。と、タイトルを書いてしまうと一作品のようですが、実は一つのラブストーリーを、天使が見える男性側と見えない女性側から描くというちょっと変わった二本立てです。その天使の役に、2005年に成井が演出した福澤一座公演の後に電撃退職してソロ活動を開始して11年目の福澤朗さんと数々の映像や舞台で活躍中の武田航平さんをお迎えします。そうなんです、夏も、過去の「アナザーフェイス」的活動から生まれたコラボレーションの展開です。
 ご期待ください。

▲ページトップへ戻る