トナカイの気持ち 成井豊


サンタクロースはいいよなあ。
世界中の子供たちに愛されて、慕われて。
そりゃ、中には「サンタなんて信じない」って子もいるけど、
「サンタなんて大っ嫌い」って子は一人もいない。
歌にもなったし、映画にもなったし。
ホント、充実した老後を過ごしてると思うよ、あのじいさん。
そこへ行くと、俺たちはどうだ?
子供たちが好きな動物って言ったら、イヌかネコ。
「トナカイが好き」とか「トナカイを飼いたい」とか、
そんな優しいことを言ってくれる子供、見たことないぞ。
いいか? サンタが乗ってる、あのデカくて重たい橇。
あの橇を引っ張って、世界中を駆け回ってるのは、俺たちなんだ。
ウマでもシカでもラクダでもなくて、俺たちトナカイなんだ。
サンタは、子供たちの枕元にプレゼントを置いてくるだけ。
一番大変なのは、俺たちなんだ。
それなのに、誉められるのはサンタばっかり。
映画になったって、俺たちには一つもセリフがない。
歌だって、「赤鼻のトナカイ」なんてみっともないのだけだ。
これってひどすぎると思わないか?
俺たちの気持ち、ほんの少しでいいから考えてくれよ。
--------と、トナカイたちに頼まれたわけではないが、
今回の物語では、トナカイの気持ちについて考えてみようと思う。
あなたが何かをしている時、そのすぐそばで、
きっと誰かが何も言わずに、あなたの手助けをしてくれている。
その人に、せめてクリスマスの夜くらい、
「ありがとう」って言ってあげてもいいじゃないか。
レインディアとはトナカイのこと。
きっとあなたも知らない間に、
レインディア・エクスプレスに乗っているのだ。サンタと一緒に。
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illustration: Taka Katoh