プレスリリースにストーリーが載せられない記念
代表(作・演出)成井豊に聞く!!
- 一昨年のクリスマスツアー『キャンドルは燃えているか』以来、実に2年ぶりの新作ですね。
「え? もうそんなに経つの? 最近、真柴との共作が多くて僕一人じゃ書かなくなったもんなあ。」
- もう成井は書けなくなったという噂が内部で出ているそうですが。
「うん。実は僕も、ちょっぴりそう思ってます(笑)。久しぶりに一人で書くのって、楽しみでもあり、不安でもある。『キャンドル〜』で出してしまった脚本遅れ最悪記録を、また更新しちゃうんじゃないかっていうのが不安の部分。楽しみの部分は、一体どんなものが書き上がるのか、今の時点では自分にもよくわかってないってこと。僕は新作のたびに、作品のスタイルや方向性がどんどん変化していく作家なんです。とは言っても、書いている最中は、自分の書いているものがおもしろいのかおもしろくないのか、まったくわからない(笑)。一番苦しんだのは3年前の『カレッジ・オブ・ザ・ウィンド』なんだけど、その時なんて、「今回こそ失敗作だ」って思った。でも、今では好きな作品の一つだし、僕の転機の一つでもあると思うし。」
- 今年で10周年ですが、その間に、作家・成井豊のスタイルはどう変わってきたんですか?
「(考えて)大きく分けると3つの時期があるかな。第1期は、1986年の旗揚げ公演『地図屋と銀ライオン』から、1987年の第6回公演『子の刻キッド』まで。この頃、僕は尊敬する宮沢賢治、野田秀樹さん、などなどの影響を受けて、詩的で幻想的でちょっぴりユーモラスな、「成井ワールド」の完成を目指してた。つまり、自分の世界を作り上げることが第一で、お客さんのことはあまり考えてなかった。わかる人にだけわかればいいやって。ところがある日、このままじゃ一生プロにはなれないことに気づいたんだな。」
- 何か、きっかけになるような事件があったんですか?
「劇団ショーマの、『ウォルター・ミティにさよなら』を観たのが大きかったね。誰にでもわかる話なのに、もうメチャクチャおもしろかった。で、プロになりたいなら、「成井ワールド」なんて後回しにして、とにかくお客さんをもっと楽しませなくちゃ!って決意して書いたのが、1988年の『スケッチブック・ボイジャー』。ショーマというか、当時の高橋いさをさんの影響を受けて、メタフィクション(多重構造)ばっかり書いてた。そのスタイルが4年ぐらい続いたかな。で、第3期のきっかけは、解散した東京サンシャインボーイズの、『十二人の優しい日本人』を観たこと(笑)。どう変わったかと言うと、タイムトラベルやアンドロイドを出さないで、現実の世界で勝負してみたくなった。で、書いたのが、1991年の『ブリザード・ミュージック』と次の年の『カレッジ〜』、というわけさ。」
- なるほど。「物語」から、「現実」へ興味が移っていったんですね。
「そういうこと。『カレッジ〜』を書いたことで、僕なりのストレート・プレイのスタイルを発見できた。で、今もストレート・プレイの時代は続いてるんだけど、そろそろまた変わりそうな予感がしてる。」
- ショーマ、サンシャインボーイズの次の事件は(笑)? まさか松竹新喜劇とか?
「あのね。特に何があったってわけじゃないんだけど、今は歴史に興味があるんだ。時代劇をやりたいってことじゃなくて、たとえば『フォレスト・ガンプ』だって、ガンプの人生は一つの歴史だよね? 僕は今まで、ある非常にドラマチックな瞬間を書いてきたけど、これからはもっと大きな流れを描きたいってこと。名付けて、『人生楽ありゃ苦もあるさ』時代(笑)。・・・ウソです。」
- 新作の構想が無い、ってことで、せっかく雑誌に記事を書いてくださる、という方々もすごく困っているんですけど、今、何かネタにしようと思っているにうな、心にひっかかってる小説とか、映画とかあります?
「映画で一番好きなのはウディ・アレンで、『ブロードウェイのダニー・ローズ』って映画をヒントにしようかなと思ってるところ。あと、興味があるのは、恋ではない恋。男女の恋愛だけじゃなくて、誰かが誰かを好きになる。そして、その人のために尽くす。サンタクロースの乗った橇を、黙ってトナカイが引くように。そんな気持ちを考えてみたい。」
「レインディアは、英語でトナカイだから、訳すと『となかい特急』。ちょっとこれじゃカッコ悪いね(笑)。一応言っておくと、これは西川浩二郎って演歌歌手が乗ってた電車が、ギャングに乗っ取られるって話じゃないよ。キーワードはもちろん、トナカイ。「この橇の行き先は、都内かい?」「このトナカイはずいぶん大きいなあ。もうオトナかい?」なんちゃって。」
- ・・・もういいです。『レインディア・エクスプレス』で、挑戦してみたいことは?
「上川隆也がまたちょっとお休み。「今回は観なくてもいいや」って来ない人が、後で「しまったあ!」と思うような、トンデモなくおもしろい作品にしますよ、私は! そのためには、やっぱり西川に頑張ってもらわないと。ということで、西川には出ずっぱりで、お客さんが涙を流して「いい加減にしてくれ!」と言いたくなるまでギャグをかましてもらいます。相手役は当然、大森。これで、王手飛車取りを狙います。さらに、今年の2月に入団した、3人のイキのいい男たちがデビューします。あくまで予定だけど。それから、僕が目指しているのは、アンケートに「○○さんがよかった」って書かれない芝居。主演はあくまで西川だけど、全員が主演に見えるような、そんな芝居を作りたい。」
- 成井さんにとって、またはキャラメルボックスにとって、ずばり「クリスマス」とは?
「愚問だね。僕にとっては、自分の誕生日より大切な日。だから、キャッシュカードの暗証番号は「1225」。あ、言っちゃった(笑)。キャラメルボックスにとっては、一年でたった一度の祝日。クリスマスは、キリストの誕生日というだけじゃなくて、自分にとって一番大切な人と過ごして、その人に「ありがとう」って感謝する日。だから、僕らも思いきり楽しみにしてます。」
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illustration: Taka Katoh