
私たちは新宿で飲んでいた。少人数の密室劇で心理サスペンスものをやりたい、と岡田氏が言った。酒で気が大きくなっていた私は、いいねえ、面白いミステリ劇観たいねえ、と勢いよく相槌を打った。じゃあオリジナルで書き下ろしお願いしますね、と頼まれた。フリーの職業人というものは、とりあえず「できない」とは言わないものなので、私はニコニコと微笑んでいた。そして、いつのまにか少人数のサスペンス劇を書くことになっていた。しばらくして、私たちは新宿で飲んでいた。「劇場押さえましたヨ。そろそろ準備をしないと」とプロデューサーの仲村氏が言った。とりあえずタイトルが必要だ。例によって酒で気が大きくなっていた私は「うんうん、タイトルを決めよう」と頷き、「この中で気に入ったタイトルある?」と、記憶の引き出しにある幾つかのタイトルを挙げた。その中で、即座に岡田氏が「これ!」と言ったのが『猫と針』だった。だからタイトルは『猫と針』に決まった。仲村氏が「どんな話ですか?」と聞いた。私が酒を舐めるふりをしてごまかしていると、岡田氏が映画『レザボア・ドッグス』の冒頭シーンいいですねえ、と言った。黒い服を着た男たちがテーブルを囲んでうだうだ四方山話をしている場面だ。私も、あのいきなり始まるタランティーノのオープニングには痺れた。だから、「ああ、あれ、カッコいいよねえ」と相槌を打った。だから、喪服を着た男女五人が葬式帰りに話し合っている、という設定になった。かつてボリス・ヴィアンという人がいて、『北京の秋』という本を書いた。人に「なぜ『北京の秋』というタイトルなのか」と聞かれ、「北京にも秋にも関係がない。だから『北京の秋』だ」と答えたそうである。『猫と針』は、猫は若干関係があると思うけれど、針が関係あるのかどうかはまだ分からない。だが、コンセプトだけははっきりしている。人は、その場にいない人の話をする、ということだ。『猫と針』は、喪服を着た男女が、その場にいない人の話をするという話である。
恩田陸
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協力
ソネットエンタテインメント
ぴあ
料金〈全席指定・税込〉 5,800円
チケット前売開始 7月1日(日)
 

主催 テレビ西日本
提携 西鉄ホール(西鉄ムーブ99)
制作協力
ピクニック
協力
ソネットエンタテインメント
ぴあ
料金〈全席指定・税込〉 5,800円
チケット前売開始 7月29日(日)
 
しくじれない挑戦
キャラメルボックスの人たちは加藤君(実は青春時代の同級生)以外は、皆さん、極めて謙虚である。今回の公演でも岡田達也さんはチャレンジシアターと遠慮がちに名乗った。しかし私はキャラメルの役者諸氏と組んで、三つ星の大人の芝居を創り上げるつもりだ。まだ打ち合わせ中だけど、恩田陸さんは小説のスタイルと同じく、徹底的に観客を楽しませるモノを書いてくれると約束してくれている。それも芝居ならではの手法を使って。初戯曲にしてすでに傑作の予感である。結果を問わないのが挑戦というものだけど、この世にはしくじってはいけない挑戦がある。この公演はそういうモノだと思っている。
横内謙介
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