この企画のお話をこどもの城からいただいてから、成井豊・石川寛美・大森美紀子たちといろんな話し合いが重ねられました。「大人でも楽しめる、こどもたちに見てもらえる、キャラメルボックスのお芝居を作ろう」と、どんなお話にしようか、といろんな案がでてきました。
その結果、この「ケンジ先生」に決まったわけですが、今年は宮沢賢治さんの生誕百周年ということで、本当に賢治さんが好きな僕たちは、あまのじゃくなので最後の最後まで「今年、賢治さんのお話をやったらブームに乗ろうとしているみたいでヤなかんじだよね」と話していました。が、結局、そういうことはすべておいといて、今のこどもたちに、こういう先生がいたんだよ、ということをお伝えしたくて、このお話をやることにしたというわけです。
成井さんがいろんなプランを話してくれていくにしたがって、「今回は、ミュージカルでもオペレッタでもないけれど、歌をいっぱい歌いたい」ということになったので、いつもの公演では「音楽を探してくる」のが仕事の僕が、「歌を書いてくださる人」を探さなきゃならなくなりました。
「音楽を作る」ということのためには、時間とお金がいっぱい必要です。でも、この公演はキャラメルボックスにとっても実験的な公演でしたので、お金も時間もほとんどありませんでした。だから、ちょっと知り合いのアマチュアの人に頼もうかな、などとちょっと弱気になったりもしました。でも、やっぱり「大人でも楽しめる、こどもたちに見てもらえる、キャラメルボックスのお芝居」を作らなきゃいけませんので、ふだんのキャラメルボックスの公演より質の劣る音楽を使ってしまっては、こどもたちに失礼ですし、ましてや大人のお客さんはもっと許してくれないでしょう。もう、「本当に僕が好きな、すごいミュージシャン」に頼まないとキャラメルボックスのお芝居、とは言えないな、と思ったのです。
そんなとき、フッと僕の頭の中に降ってきたのが、ZABADAKの吉良知彦さんのメロディだったのです。
ZABADAKの、宮沢賢治さんの作品を題材にした「賢治の幻燈」というアルバムを、僕はこっそり隠していて、いつかこの人といっしょにお仕事をしたい、と思っていたのを急に思い出したのです(「レインディア・エクスプレス」というお芝居で、一曲だけ使わせていただいたことはありましたが)
そして、春の公演を吉良さんに見に来ていただいたことから、「ケンジ先生」の準備は始まりました。
なにしろ時間がない。じゃあ、どうしよう。そこで、過去の、そして今度発売される吉良さんのアルバムの曲を、「ケンジ先生」用に直していこう、ということになりました。それでも、どうしても書いていただかなければならない曲が出てきたのでお願いすると、「うん、三曲ならなんとかなるかもしれない」とおっしゃってくださいました。
九月発売のニューアルバムの録音、十月発売の未発表曲を集めたアルバムの録音、ライブのリハーサル、そしてウチの「風を継ぐ者」のための曲のREMIX、とものすごくお忙しい間を縫って、吉良さんをはじめ、バイオスフィアレコードの皆さんが、全力でこのお芝居に間に合うように、そして「ZABADAKのクオリティ」をバッチリ追及して、音楽を作ってくださいました。
今回の、成井豊の脚本にGEN'S WORKSHOPの加藤タカさんの舞台美術という「色」をもっともっと不快色にしてくださったZABADAKの吉良さん。長野で畑仕事をしたり、マレーシアで昆虫採集をしたりするのが趣味、という素敵な方です。そうなんです、この夏、僕は吉良さんから「虫採り」の時間をレコーディングで奪ってしまったのです……。
皆さん、是非、せめてもの罪ほろぼし(?!)、「賢治の幻燈」、そして九月と十月に発売されるニューアルバムを、是非“買って”聴いてください!!
「ケンジ先生」のワンシーン、ワンシーンがくっきりと思い出していただけることまちがいなしですからっ!!
そして、皆さんの周りの人たちに、「こんな素敵な音楽をやっている人がいるんだよ」と聴かせてあげてくださいねっ!!
ちなみに、九月の新宿のシアターアプルで上演するキャラメルボックスのサマーツアー「風を継ぐ者」の音楽も、ZABADAKの音楽です。
「風を継ぐ者」って新撰組が主人公の時代劇なんですよっ!!
それなのに、ZABADAK。「こんなにふんわりした音楽が時代劇に合うの?!」と思われたあなた。
……(ニヤリ)お楽しみに。