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加藤昌史コラム「観終わってから読んでください」

演劇集団キャラメルボックス 製作総指揮 加藤昌史

『水平線の歩き方』、そして東京と大阪公演では新作『君をおくる』も上演いたしました。キャラメルボックス独自の、上演時間60分の短篇演劇「ハーフタイムシアター」、いかがでしたでしょうか。

 今年で結成30周年を迎えた私たち演劇集団キャラメルボックスは、最初の十年で急成長しすぎてしまったことで逆にそれまでの劇団が経験しなかったようなことをたくさん経験させていただき、しかし逆に普通に経験するはずのことをしないままに時が過ぎてしまった、という感じがありました。

 この「ハーフタイムシアター」という短篇演劇は、結成4年目に前もって予約してあった劇場の日程がお客さんの増え方に間に合わず、「この期間では観たいと思ってくださる方が入りきれなくなってしまう」という事態になり、「じゃぁ、いつもなら1ステージしかできない時間に2回やればいいんじゃない?」という安直な発想からスタート。いつもの半分の上演時間の作品を作ってみた、というのが始まりでした。
 それが、やってみたら「演劇」というとてつもなくハードルが高いエンターテインメントの敷居を低くした、という効果が後からついてきました。みなさんはいかがでしたか?「60分の演劇」は、長かったですか、短かったですか? あっけなかったですか、濃厚でしたか? 
 長い、大げさ、難しい、説教臭い、など、「演劇」にまつわるいろんな先入観はあると思います。僕自身が、自分でこの劇団を始めるまではそう思っていたくらいですから、きっと今でもそう思っていらっしゃる方は多いのではないかと思います。
 初めて演劇に、そしてキャラメルボックスに出会う方のためには、これ以上ない上演形態だと思っていますがいかがでしょうか。過去にもたくさんやってきたものはDVDにしてありますので、よろしかったらご自宅でもお楽しみください。

 そして、「グリーティングシアター」の誕生について。
 昨年の2014年に『無伴奏ソナタ』という作品で初めてチャレンジしてみた「今まで行ったことがない街に会いに行くツアー」のことを、と「グリーティングシアター」と名付けました。
 キャラメルボックスは、もともと100人入れるかどうかという小劇場から始めた劇団ではあったのですが、あっという間に大きな劇場で上演するようになったこともあり、セットや照明などが大がかりになっていきました。だいたい、劇場に入って二日がかりで仕込みをし、三日目に初日を開ける、というのが通例で活動してきたため、地元である東京以外では大都市でかなりの人数のお客さんに来ていただかないとその規模の公演はできない、というジレンマを抱えてきました。
 ところが、2011年10月に、「とにかく震災後の東北の人たちに会いに行こう」と決意して、その日の朝に仕込んで午後には本番ができる、というお芝居を作り上げ、七つの町をバスで回ってきました。どの会場でも、とても喜んでいただき、生身の役者達にしかできないライブの演劇の力を、あらためて自分たちが確認することになりました。
 その経験を経て、東京での本公演となんら変わらない完成度と感動を得られる舞台を短い仕込み時間でも成立させる、という方法の糸口を見つけ、「せめて年に一度は、こちらからいろんな街の人たちにに会いに行こう」と決めたのです。
 札幌の劇団「TEAM NACS」が札幌以外での公演のことを「地方公演」と呼ぶのは素敵だな、と思うのですが、よく東京の劇団が使う「地方公演」という言葉には、なんとなくネガティヴな印象があったため、僕たちがやりたいことを表現するための言葉として「グリーティング=ご挨拶」を選びました。大がかりな公演は大都市でしかできませんが、これもちゃんとキャラメルボックスです、というご挨拶をしにこちらからうかがう、という意味です。
 昨年のことがあっという間に全国に伝わったのか、去年は初めての街が二カ所だったのに今年は四カ所。そして来年はなんと、もっとたくさんの街から声をかけていただいています。

 「初めての方にぴったりなハーフタイムシアター」を、「初めて出会うみなさんに会いに行くグリーティングシアター」でやる、という今回の試み。実は「せっかく呼ぶなら2時間ものを」と、実現しなかった街もありました。なるほど、と思いました。来年は、長めでも初めての方に楽しんでいただける作品をお届けしに行こう、と考え直しはしましたが、「ハーフタイムでグリーティング」は、またいつかやってみたいと思っています。

 11月から始まるクリスマスツアーは、新神戸、新潟、東京の池袋で、15人も出演する賑やかでハッピーな作品を上演します。もしお仕事や観光でいらっしゃるついでがありましたら、是非お立ち寄りくださいませ。または、キャラメルボックスついでに各都市の観光、なんていうのも楽しいかもしれません。また、劇場でお目にかかれることを楽しみにしております。

[ 2015.10.5. Katoh Masafumi ]