魔法の名前
成井豊

僕が9年前に書いた脚本の中で、
主人公の「まりな」という名前の女の子がこんな科白を言う。
「人間なら誰だって一つぐらい魔法が使えるものよ」
その時、どんな気持ちでその科白を書いたのか、
今の僕にはどうしても思い出せない。が、僕は子供の頃から魔法というものに憧れていた。
昭和36年生まれの僕は、
「奥様は魔女」や「魔法つかいサリー」や、
「ひみつのアッコちゃん」や「悪魔くん」を見て育った。
人一倍そそっかしくて、失敗ばかりしていた僕は「ああ、今、ここで魔法が使えたら!」と、
毎日毎日、思っていた。
当たり前のことだが、この世に魔法つかいなんていない。
しかし、奇跡はたびたび起こる。
ロスタイムの逆転トライ。9回裏の逆転サヨナラホームラン。
人間という生き物は、ときどき魔法みたいなことをする。
それはけっして運とか星占いとか神様のいたずらとか、
そんな人間以外の力によるものではない。
ここ一番の精神力、つまり「心」の仕業なのだ。
人間なら誰だって一つずつ心を持っている。
とすれば、魔法だってきっと使える。
9年前の僕は、そう思ってあの科白を書いたのかもしれない。
が、今の僕なら、きっとこう書くだろう。
「人間なら誰だって、一つぐらい魔法が使えるものよ。
でも、それはけっして自分のためには使えないの」
その魔法の名前は「TWO」。
一人だけではできないことが、二人いればできてしまう。
今回の物語では、そんな魔法について考えてみようと思う。


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