演劇集団キャラメルボックス1997スプリングツアー
アコースティックシアターVol.4


脚本・演出 成井豊+真柴あずき



[アコースティックシアター]シリーズについて
私の祖母は、私が大学生のときになくなりました。
両親が共働きだったこともあって、夏休みなど、
長い休みのときには必ず、祖母の家に長期滞在をして、
いとこたちに遊んでもらっていました。
小さい頃の私は泣き虫で、
ウルトラマンの怪獣がかわいそうだと言っては泣き、
深夜に走る列車の音(祖母の家の裏に線路があったのです)が
怖いと言っては泣き、祖母におんぶしてもらって
やっと安心するような子でした。
祖母が亡くなる前の年の夏、東京から帰省して、
一晩だけ祖母の家へ行きました。
いつもはいとこたちと大きな部屋で寝るのですが、いとこが結婚して集まった人間が増えたせいで、私は祖母の部屋で二人きりで寝ることになりました。
もう私は泣き虫ではありませんでしたが、その夜はなぜか、祖母と手をつないで布団に入りました。
その時に祖母が初めて、自分が若かった頃の話をしてくれました。
19歳で、顔も知らない人と結婚しなければいけなかったこと。
お嫁にいく前の晩は、悲しくて悲しくて、朝まで泣いたこと。
やりたいことが何なのか、それさえわからないうちに、
子育てや家事に追われたこと。そして最後に、私の手をぎゅっと握って、
「あなたはこれから、何でも好きなことができる。ずっと応援するから、他の人が何を言っても、自分の好きなことだけをやりなさい」と言ってくれました。
その次に祖母に会ったのは、もう病院の中でした。
「好きなことをやる」のは、
楽しいだけではありません。
分かれ道は何度もありましたし(きっとこれからも)、
逃げたくなることもあります。でも私には、もう二度と会えなくても、味方がいるのです。
私も誰かの、どこかで歯をくいしばって生きる誰かの、味方になりたい。
そう願いながら、この物語を始めようと思います。

真柴あずき


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photograph: Kazunori Ito