演劇集団キャラメルボックス1997スプリングツアー
アコースティックシアターVol.4

脚本・演出 成井豊+真柴あずき
[アコースティックシアター]シリーズについて
- 『四月になれば彼女は』『アローン・アゲイン』『ヒトミ』と、通常のキャラメルボックス公演とは少し趣を変えて、<人が思う気持ち>をつきつめたシンプルな物語。
- 通常公演とは異なり、女優でもある真柴あずきが第一稿を執筆。それを成井豊が手直しする、という形態の脚本で、真柴の世界観が表に出た作品群が、アコースティックシアターである。
- 真柴あずきは、今年33歳。彼女の描く世界は、20代から30代の女性に圧倒的な人気を誇り、1995年の『ヒトミ』では、会場内が涙が止まらずにすすりあげる女性たちの声でいっぱいになるという事態に。今回のアコースティックシアター第4弾は、待ちに待たれた新作ということになる。
私の祖母は、私が大学生のときになくなりました。
両親が共働きだったこともあって、夏休みなど、
長い休みのときには必ず、祖母の家に長期滞在をして、
いとこたちに遊んでもらっていました。
小さい頃の私は泣き虫で、
ウルトラマンの怪獣がかわいそうだと言っては泣き、
深夜に走る列車の音(祖母の家の裏に線路があったのです)が
怖いと言っては泣き、祖母におんぶしてもらって
やっと安心するような子でした。
祖母が亡くなる前の年の夏、東京から帰省して、
一晩だけ祖母の家へ行きました。
いつもはいとこたちと大きな部屋で寝るのですが、いとこが結婚して集まった人間が増えたせいで、私は祖母の部屋で二人きりで寝ることになりました。
もう私は泣き虫ではありませんでしたが、その夜はなぜか、祖母と手をつないで布団に入りました。
その時に祖母が初めて、自分が若かった頃の話をしてくれました。
19歳で、顔も知らない人と結婚しなければいけなかったこと。
お嫁にいく前の晩は、悲しくて悲しくて、朝まで泣いたこと。
やりたいことが何なのか、それさえわからないうちに、
子育てや家事に追われたこと。そして最後に、私の手をぎゅっと握って、
「あなたはこれから、何でも好きなことができる。ずっと応援するから、他の人が何を言っても、自分の好きなことだけをやりなさい」と言ってくれました。
その次に祖母に会ったのは、もう病院の中でした。
「好きなことをやる」のは、
楽しいだけではありません。
分かれ道は何度もありましたし(きっとこれからも)、
逃げたくなることもあります。でも私には、もう二度と会えなくても、味方がいるのです。
私も誰かの、どこかで歯をくいしばって生きる誰かの、味方になりたい。
そう願いながら、この物語を始めようと思います。
真柴あずき
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photograph: Kazunori Ito