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KATOs COLUMN 加藤昌史コラム「観終わってから読んでください」

演劇集団キャラメルボックス 製作総指揮 加藤昌史

『きみがいた時間 ぼくのいく時間』 観終わってから読んでください

キャラメルボックス製作総指揮 加藤昌史


『きみがいた時間 ぼくのいく時間』、8年ぶりに再演したのですが、いかがでしたでしょうか。
 2008年の初演は、現在映像を中心に大活躍している上川隆也が在籍していた時代の後期に2カ月近くに渡って東京・神戸・大阪で上演しました。
 当時の上川は、2004年に明治座で『燃えよ剣』の座長を務めた後、NHKの大河ドラマ『功名が辻』での主演(2006年)や、フジテレビのドラマ「花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス〜」(2007年)への出演などが続いていたため、落ち着き先のキャラメルボックスに出演する、とは言っても、きっと「商業演劇」方面を見慣れたタイプのお客さんが押し寄せてきてくださるのではないか、と予想して、「せっかくだったら僕たちも商業っぽく途中休憩を入れてみよう」という初の試みをしてみたのでした。
 それはそれで初日が開けた頃は斬新な感じはしたのですが、やはりやっていて、自分たちでも「キャラメルボックスっぽくないぞ」というモヤモヤがあり、今回再演をするにあたっての最大の改訂ポイントは「いつも通り、休憩無しの120分でやる」ということでした。
 それに伴って、初演にあった里志と紘未の結婚式のシーンなどがばっさりなくなり、休憩の寸前に里志が乗って煙で真っ白になって暗転、という演出だったクロノス・スパイラルはカプセル式ではなく扉の向こうに入る形になり、など、細かいような大きいような変更がありました。
 そして最も大きいのは、「今の里志」と「過去の里志」と「未来の里志」が次々と描かれ続けたため、観ている方もやっている方もこんがらがってしまっていたところを思い切り整理した、ということです。

 この8年は、初演で主演した上川の退団や大震災など、劇団としても社会としても大きな変化がありました。しかし、最も大きな変化は、阿部丈二・多田直人・渡邊安理、という「2004年入団トリオ」の活躍だったと思っています。
 これは、初期の上川隆也・近江谷太朗・坂口理恵という「1989トリオ」とも印象がかぶるところがあって、何年かに一度こういうことがあると、やはり「劇団」という集合体は生き物なのだなぁ、と実感させられます。
 ※ちなみに、大内厚雄・細見大輔(退団)・前田綾の「1995トリオ」、石原善暢・筒井俊作・実川貴美子の「2002トリオ」もいますけれども。
 舞台を主軸に活動し続ける多田直人と渡邊安理に対して、作家の有川浩さんとのユニットでの活動や、自ら飛び込んだ所属事務所「ホリプロ・ブッキング・エージェンシー」経由の映画やTVドラマの仕事も多数経験してきた阿部丈二。対照的な活動をしているのもまた1989トリオとかぶるところがあります。その阿部丈二は、今回の作品でキャラメルボックス入団以来38作品目の出演。すでに多数の主演を務め、劇団公演だけでも1000ステージ以上を経験してきた男だからこそ任せられた、今回の「39年間を生き直す」という過酷な主人公だった、というわけです。

とんでもなくキツい2016年のスタートとなった『きみがいた時間 ぼくのいく時間』ですが、実はこの舞台に出演していた14人が、もう一本の作品『フォーゲット・ミー・ノット』にも全員出演しているのです。
 そちらは、この『きみがいた時間 ぼくのいく時間』と同じタイムマシン「クロノス・スパイラル」を巡るもう一つのお話。後から書かれただけに、世界観は同じです。つまり、こちらの登場人物があちらにも……!!
 今作品を気に入っていただけた方は、ぜひなんとかご都合をやり繰りして『フォーゲット・ミー・ノット』もご堪能くださいませっ!!


『きみがいた時間 ぼくのいく時間』解説

梶尾真治さんによる原作は、2006年6月に発刊された『きみがいた時間 ぼくのいく時間−タイムトラベル・ロマンスの奇跡−』というバラエティブックが初出です。そこには2005年にキャラメルボックスが上演した『クロノス』(『クロノス・ジョウンターの伝説』の第1篇「吹原和彦の軌跡」が原作)の時に発売した「トーク&フォトブック」に掲載した梶尾さんと成井豊の対談や「成井豊の「梶尾真治ブックガイド」」も収録されていました。

しかし、その当時は『きみがいた時間 ぼくのいく時間』は、出てくるタイムマシンが「クロノス・スパイラル」という別なものであったこともあり、『クロノス・ジョウンターの伝説』シリーズの一つとしてはカウントされておらず、あくまでも「外伝」のような位置づけだったと思われます。
 しかしその後、2008年にキャラメルボックスが『きみがいた時間 ぼくのいく時間』を初演するのに合わせて発刊された短編集「クロノス・ジョウンターの伝説∞インフィニティ」にはシリーズの一つとして収録されることになりました。

そして今回、ロビーで販売している『クロノス・ジョウンターの伝説』の文庫本は、中身は昨春の『クロノス』&『パスファインダー』の時と変わらないのですが、表紙カバーが完全に2016年版『きみがいた時間 ぼくのいく時間』に衣替えしたスペシャルバージョン!!
 これを出版している徳間文庫の担当の方は、かれこれ20年以上前からキャラメルボックスの舞台をほとんどご覧くださっていて、なおかつ梶尾さんの大ファン、という方なので、力の入り方が尋常ではありません。
過去のクロノスシリーズの本を持っている方も、勢いに押されてご購入をお願いいたしますっ。

[2016.2.20. Katoh Masafumi]

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