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KATOs COLUMN 加藤昌史コラム「観終わってから読んでください」

演劇集団キャラメルボックス 製作総指揮 加藤昌史

『フォーゲット・ミー・ノット』 観終わってから読んでください。

キャラメルボックス製作総指揮 加藤昌史


梶尾真治さんの『きみがいた時間 ぼくのいく時間』を下敷きに、キャラメルボックスの成井豊が書き下ろした「クロノス・スパイラル」を巡る新作『フォーゲット・ミー・ノット』。いかがでしたでしょうか。

 『きみがいた時間 ぼくのいく時間』の原作が発表される前に上演した『クロノス』をご覧くださった原作者の梶尾真治さんは、「現実の」クロノス・ジョウンターを舞台で見てとても喜んでくださいました。その上演後に発表された、「クロノス・ジョウンターの伝説∞インフィニティ」というバラエティブックに収録されたクロノスシリーズ新作「野方耕市の軌跡」では、キャラメルボックスで野方役を演じていた西川浩幸そっくりな登場人物として描写された上に、『クロノス』に出てきたシャープペンシルが登場するなど、原作と舞台が交錯していく、という、かつて聞いたことがない、これこそ「コラボレーション」ということが起きていきました。
 そして2010年、その「野方耕市の軌跡」を舞台化した『南十字星(サザンクロス)駅で』を上演して、キャラメルボックスのクロノスシリーズ上演は幕を閉じた……かのように見えました。

ところがその5年後で劇団結成30周年の2015年、『クロノス』の再演と同時に発表されたのが、「原作者の許諾を得て成井豊がクロノスシリーズの新作『パスファインダー』を書き下ろす」という、前代未聞の企画でした。

そもそも、1985年に結成以来100本以上の作品を書いてきた脚本家・成井豊ですが、学生時代には小説家志望だったこともあり、傍から見ていると「異常」とさえ感じるほどの読書家です。おそらく今でも一日一冊以上のペースで小説を中心にジャンルを問わず読み続けてきています。映画鑑賞も「オタク」の領域を越えていて、年に200作品以上は観ているのではないでしょうか。2010年9月から始めた「読書&映画鑑賞ブログ」をご覧いただくと、その「異常」さがよくわかります。毎月、40〜50本の作品が紹介されていて、なんとあの大震災の後も動じずに書き続けられてきたのです。


■成井豊公式ブログの初回はこちら

「芥川賞はなぜ村上春樹に与えられなかったか [本]」2010年9月30日
http://narui.blog.so-net.ne.jp/2010-09-29

そういう人がやっている劇団ですから、膨大な小説や映画の中で彼の「年間ベスト3」くらいに入らないと舞台化に至らないため、僕のような全方位ミーハー人間がおもしろいと思った作品を「やりましょうよ」と提案してもことごとく却下されてしまいます。
 そんな成井が書く脚本は、結成当初からなんらかの小説や映画を下敷きにして今に置き換えたり、二つの話を組み合わせて展開させていったり、というようなものがほとんどでした。完全にオリジナルのストーリーという作品の方がむしろ少なかったのです。つまり、「アレンジャー」のような脚本家、と言えるのではないでしょうか。  ところが長いこと劇団をやってきていろんな繋がりができてきてから、2004年に北村薫さんの『スキップ』を上演させていただくことができ、そして2005年から梶尾さんの作品を上演し続けることができ、「大好きな小説を、原作の名前そのままでアレンジを加えて舞台にする」という幸せを味わうことができるようになりました。
 そしてその究極が、「原作者の許諾を得て続編の新作を書いて舞台で表現する」という、2015年春の『パスファインダー』。
 これを観に来てくださった梶尾先生も大喜びしてくださり、それがキッカケで今回の『フォーゲット・ミー・ノット』上演に至った、というわけです。


『きみがいた時間 ぼくのいく時間』をご存知ない方のためにいくつかの事実をご紹介します。劇中に出てきた「ピーフレック」という名前の会社は、梶尾真治さんの原作『クロノス・ジョウンターの伝説』シリーズに出てくるタイムマシンを研究開発している会社で、今回出てきた「クロノス・スパイラル」というものと並行して「クロノス・ジョウンター」というマシンも作っています。そして、そちらを開発したのが春山恵太を一目見て入社を決めた男・野方耕市(西川浩幸)。
 これまでのこのシリーズには必ず登場してきていますので、是非DVDなどで彼の活躍を追っかけてみてください。

また、「馬車道ホテル」で、わけありげに工具箱を持って出てきた男・楢原(阿部丈二)は、劇中にも出てきましたが、実は恵太が入社する前にP・フレックでクロノス・スパイラルを開発していた男。とある事情から39年前に飛んできて、このホテルに勤めていました。『きみがいた時間〜』では、この男が主人公で大変な目に遭いますのでお楽しみに。そして、この馬車道ホテルそのものが、『きみがいた時間 ぼくのいく時間』でも重要な舞台となっています。ですので、あちらをご覧になる際には、柿沼純子(前田綾)の動向にご注目いただくと、今作品との密接な繋がりを楽しんでいただけると思います。


この劇団を初めてご覧くださった方へ。
主人公・春山恵太を演じた男・筒井俊作は、1982年生まれで2002年入団。幼い頃に漫画家・赤塚不二夫さんの近所に住んでいたことから可愛がられ、彼をモデルにしたキャラクターが漫画に出てきたこともあるそうです。喋るスピードの速さは、赤塚先生のキャラクターたち譲りなのかもしれません。
 そして、この大きな肉体は、ご覧いただいてご理解いただけたことかと思いますが全身筋肉。諸事情から、鍛えすぎてしまった、とのことです。
 歌って踊って戦える、劇団で最も声量が大きい俳優ですので、「キャラメルボックスのサモ・ハン・キンポー」としてご記憶いただければと思います。

[2016.2.20. Katoh Masafumi]

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