8月の終わりのことだった。短大生・ほしみは、家族全員を一度に失ってしまう。
家族旅行が始まった直後に、父の運転するキャンピングカーが対向車と衝突したのだ。ただ一人、奇跡的に助かったほしみ。年に一度の家族旅行。みんなが乗り気じゃないのはわかっていた。それでも、家族揃って行きたくて、やっとみんなを説得したのに。
しかし、ほしみには寂しがっている暇はなかった。5人の家族が幽霊になって、入院しているほしみのそばにいるのだ。おかげで、彼女の病室は一日中、大騒ぎになる。その姿は彼女にしか見えないため、同室の入院患者や、看護婦や、友人までがほしみを心配する。
ある夜、ほしみの病室に叔父の鉄平が忍び込んできた。今や、ほしみにとって、彼は唯一の血のつながった存在だった。彼は、ある事件の犯人として警察に追われているらしい。妻・あやめに会いたい鉄平。ほしみはあやめが来るまで鉄平をベッドの下にかくまうことにする。
自分たちの葬式にも行かず、片時もほしみのそばを離れようとしない家族たち。バラバラだった家族がやっと一つになれたのだ。でも、ほしみはちっとも嬉しくない。「どうして死ぬ前に言ってくれなかったのよ。そばにいるよって」
やがてあやめが、病室にやって来る。「おじさん、出てきて」しかしその時、隠れていた刑事たちが飛び出してきた。彼らはあやめを尾行していたのだ。「高梨、早く出てこい」銃をかまえる刑事たち。鉄平、彼らの前に立つ!が、鉄平の姿は、刑事にも、あやめにも見えなかった。
鉄平は、逃走中に過って命を落としていたのだ。あやめがほしみに聞く。「鉄平さんがそこにいるの?」鉄平が言う。「あやめに俺は見えない。あやめは、俺を見ていなかったから」鉄平は、あやめとあやめの同僚・菊川との関係を疑ったままでいたのだ。
ほしみは考える。バラバラだったはずの家族がほしみに見えるのは、彼らがやっとほしみを見てくれたから。「あやめさんはずっと、おじさんの方を向いてるよ。それなのに見えないのは、おじさんがあやめさんに向かっていないからよ!」鉄平の心が揺れた時、あやめの目の前に鉄平の姿が鮮やかに浮かび上がった……。
そして、家族旅行は、本当の終わりを迎える。「また会おうね。また来年の夏に」