トップページ

Column 観終わってから読んでください。

演劇集団キャラメルボックス 製作総指揮 加藤昌史

あなたのところまで、風は届いたでしょうか。「演劇をやっててよかったっ!!」と思うラストシーン。楽しんでいただけていたら幸いです。

この作品は1991年に初演した後、2回再演してきて今回が4回目。その初演の23年前から、清吉じいさんは今回と同じ西川浩幸が演じ続けてきています。つまり、今回も相当「じじいっぷり」を上げていたのですが、23年前から「じじい」だったわけなので、これはきっとまた23年後にも本物の「じじい」になっているはずの西川でこの作品をやってるのではないかな、と思います。というか、それが夢です。是非その時も、また観に来てくださいねっ!!

さて。実はこの作品、2011年の震災があった時に「今年の冬はこれをやろう」と思ったナンバーワンでした。でも、数年先までやることが決まっていたので今年になったというわけですが、逆に今で良かったな、と思っています。あの頃は「今頑張ればすぐに明るい日常が帰ってくる」と思っていたわけですが、とんでもなかったわけで、ニュースは減っても福島の現状は全く改善していないどころか後戻りしているようにさえ感じます。
が、逆に人間にはどうにもできないことがある、ということもこの4年間で思い知らされてきた気がします。でも、僕たちは歯を食いしばって生きていく。自分のすぐ後ろに絶望が追いかけてきていたとしても、きっとどこかで待ってくれている希望のために今を全力で生きる、ということを、東北の方々に教えてもらったし、その教えは宮沢賢治さんの著作にも通じるところがある、と思います。

そして、演劇、という題材を正面から捉えた今作品。ぶっちゃけ、1週間でエチュードから芝居を作って初日を開けるのは「シアタームーンライト」クラスの劇場では不可能だと思います、似たクラスの公演をいつもやってる劇団の製作総指揮である僕からしたら。しかし、きっと、清吉さんと仲間たちはプロでも無理だと思うその作業を、きっとやり遂げたのでしょう。西川同様1991年から全ての『ブリザード・ミュージック』に出演してきた坂口理恵が、キャラメルボックス・アクターズブログの11月7日のところに初演の最初の通し稽古の時のことをこう記しています。

「当初、25歳ぐらいだった私は、この話の面白さがわかりませんでした。正直、脚本が半分出来てくるまで、『地味な話だな〜』と、思ってました。ウキャー!でも、脚本が出来てくる度に、おじいちゃんの謎が解けてきて、その気持ちに巻き込まれていったのです。芝居をしている自分が、役の自分なのか、役者としての自分なのか、稽古が進めば進む程、境目が無くなっていきました。役と同化しようとしているのではなくて、ただ芝居をやりたい自分が、必死でそこにいる……。不思議な魅力のある芝居でした」。

演劇を必死でやっている人間たちが演劇のことを舞台でやる。そんなの、寿司屋さんが舞台の上で寿司を握っているところをみんなでじーっと見ているようなもんです。……それはそれで面白そうだけど……。
が、普段やっていることをお客さんにお見せする状態にまで昇華していく、というのは実はタイムトラベルしたり幽霊になったりするよりもむしろ難しいこと。たとえば、「あなたが今朝起きた時から今までを、忠実に再現してください」って言われたら、不可能ですよね?そんな感じ。
でも、そこがこの『ブリザード・ミュージック』のおもしろいところなのではないか、と思います。普段お客さんが見ることができないキャラメルボックスの日常を堂々とこっそりお見せしたような感覚でもあります。

そんな今公演。
実は、1994年の初再演の『ブリザード・ミュージック』は、それまで新宿のシアターアプルという今はなくなってしまった劇場をホームグラウンドとしていたキャラメルボックスが、サンシャイン劇場に挑戦した初めての公演でした。それからはほとんど東京公演はサンシャイン劇場。つまり、なんとキャラメルボックス・サンシャイン劇場上演20周年っ!!……今年の10月ぐらいに気がついたのでどこにも謳っていないのですが、個人的に快挙だと思いますっ!!
そして今回「ミハル」を演じた渡邊安理と「おとうさんの清一郎」役の阿部丈二、そして『太陽の棘 彼はなぜ彼女を残して旅立ったのだろう』に出演する多田直人の同期三人は、今年が入団10周年。「まだ?」とも「もう?」とも感じますが、おめでとうっ!!

……と、めでたいお話を書いたところで、寂しいお知らせを。2011年入団の劇団員・鈴木秀明が、退団することになりました。底抜けにいいヤツなので、これからのスズキはきっと自分の場所で飛躍してくれると思います。またどこかで道が重なることを楽しみにしております。

そして、次回公演。
昨年までのキャラメルボックスは、毎年夏に年間パスポート「トライアスロンパス」を発売するのと同時に翌年の公演スケジュールを発表していたのですが、今年はそれをやめました。来年が30周年、ということもありますが、年間スケジュールをあまりにも早く出してしまうことで自分たちがやりたいことの首を絞めているのではないか、という反省もあり。あとは、劇団なんてものはいつ潰れるかわからないのに翌年分のチケット代を前もっていただいておくとはなにごとか、と、退路を断つ意味もあり。
が、そのせいで、じっくりじっくり企画を練ることができるようになりました。

それでまず春にやるのが、『クロノス・ジョウンターの伝説』シリーズの2時間作品2本立て。
なんと『クロノス』は10年ぶりの再演です。しかも、『クロノス』シリーズは梶尾真治さんの原作があっての舞台で、2010年の『南十字星駅で』で完結したはずだったのですが、30周年なのに再演だけってわけにはいかんぞ、ということで、なんと梶尾さんのシリーズの新作を成井豊が書き下ろす、という掟破りなことをやっちゃいますっっっっっ!!それが『パスファインダー』。
もちろん梶尾さんの快諾をいただいてのものではありますが、夏に発表しなきゃいけなかったとしたらこのアイディアは生まれていなかったと思います。そしてその新作には、俳優集団「D-BOYS」から陳内将くんをゲストにお迎えします。もちろんこれは今秋にD-BOYSの舞台、Dステ15th『駆けぬける風のように』を成井豊が作・演出したことがキッカケの客演。これまた、夏に発表してしまっていたら無かったかもしれません。

もはや、『ブリザード・ミュージック』を上演したところからキャラメルボックスの30周年のお祭りは始まっている感覚です。さぁ、『クロノス・ジョウンターの伝説』の次には何が来るのか……?!全く目を離せないキャラメルボックスの2015年、よろしくお付き合いくださいませっ!!

[2014.11.7. Katoh Masafumi]

サイトトップヘ戻る