見上げれば、そこにある 成井豊
小学生の頃、僕もいつかは宇宙に行けると思っていた。
アポロ計画は順調に進んでいた。
21世紀になれば、誰もがロケットに乗って、
M78星雲とは言わないまでも、
せめて月ぐらいは行けるようになるだろう。
宇宙はけっして遠い憧れではなかった。
ニューヨークの、ちょっと先にあるような気がしていた。
ウルトラセブンは毎週、宇宙人と戦っていたし、
謎の円盤UFOは毎週、アメリカに飛来していた。
学校の宿題を忘れる日はあっても、
宇宙や宇宙人について考えない日はなかった。
知らない間に消えていた。僕の心の中から、宇宙が。
僕は死ぬまで、宇宙に行けないだろう。
アメリカの探査機が火星に到着しようと、
日本のロケットが離陸に失敗しようと、心は動かない。
(また税金が無駄に、とは思うけど)
今の子供たちは、宇宙をどう思っているのだろう。
もちろん、大きくなったら、NASAに入って、
スペースシャトルに乗りたい、と思っている子もいるだろう。
が、ほとんどの子は、夜空を見上げることもなく、
液晶画面に向かっているのではないか。
それを批判する資格は、僕にはない。
僕も宇宙を忘れていたから。
しかし、宇宙は今も、子供の頃と同じように、
見上げれば、そこにある。
僕の仕事は、忘れ物を見つけ出し、届けること。
今回の物語では、宇宙をお届けしよう。もちろん、冒険も。
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