今回の公演への希望や意気込み。

今回の再々演にあたって、こんなことに気をつけて欲しい、こんなことができるようになって欲しいという希望はありますか?
今回は全然違うものになると思いますよ。だって本物のろう者(客演・忍足亜希子さん)が雪絵を演じるんですから。例えば、今までのものは日本人が外国人のふりをしているような芝居だったのが、今回は本物の外国人が入る。それによって、今までとは違った形で芝居を作っていくことになると思うんですよ。役者の方も外国人がひとり入った感覚、そういう感覚で一緒に稽古をしていって欲しいですね。「伝えたい」という想いは、共通の言葉がなくてもハートがあれば伝わると思うんですよ。だから、キャラメルの役者さんと忍足のコミュニケーションでは何も心配はしていません。あと、もう1つ、このお芝居をご覧になる皆さんにぜひお願いしたいのは、普通に1つの素晴らしい作品として観てもらいたいということです。もちろん演じるほうも同じラインでスタートして欲しい。聞こえないってことが不自由だとか大変だとかではなく、ろう者を違う文化の人という感覚で観たり、演じたりしていただいて、芝居と手話の世界、みんながその中で何か発見してくれたら嬉しいなと思います。手話の世界へ観客のみなさんをいざなってくれる、ろうの仲間達にチャンスを与えてくれるというところでキャラメルはすごいと思います。ろうの俳優達はきっと喜んでいます。自分たちもろう学校の子ども達も、昔は俳優なんて想像もできなかった職業でした。でも、今はできる。聞こえる子ども達は自分の夢に向かって努力さえすれば何でもできるけれど、ろうの子ども達は努力してもできる事とできない事2つに別れてしまう。法律の壁もあります。忍足も昔はスチュワーデスになりたかった、でもそれは叶えられなかった。女優という仕事も叶わないことだと思っていたから、なろうとは考えていなかった。自分の夢の中から外していたんですね。それが今、忍足は女優をやっている。叶わないと思っていた夢が実現しているんです。キャラメルのみなさんも、私たちをその中に引き入れてくれたということで、感謝しています。今からハラハラ、ドキドキ、熱い思いでいっぱいです。あ、西川さんも意気込みというか、今だから言えるけどあの時はこう思っていたとかあったら言ってください。
僕ね、先生にあまり何も言われなかったなって感じがしていて、演じながらいいんだろうか、これでいいんだろうかってずっと思ってたんですよ。
西川さんって自分自身を分析して、常にもう一人の西川さんが自分をチェックしているの。迷探偵クナンだから(笑)。全部自分で発見してるんですよ。間違いっていうか「あれっ?」って思ったところが、あとになるとすぐに直っていたりして、すごい人だなぁって思ってました。手話って「読みとり」からなんですね。英語もヒアリングからっていいますけど、西川さんは読みとりがとってもできる人なんですよ。手話の技術って、心なんです。そういう意味で、キャラメルのみなさんは強いんだと思うんです。心がないと手話って覚えられない。形だけではない、記号でもない、心の言葉。大げさにいうと魂の言葉って言うんですか。手話が分からなくても何となく言ってることが分かるっていうのが大事なんです。だから、特に西川さんの前では忍足と内緒話はできないなぁって思ってるんですよ。全部読み取られちゃいそうで(笑)。
どうですかねぇ(笑)。今回僕はもっと楽しい部分を増やしたいなぁって思ってるんですよ。以前にやったときは「ちゃんとしなきゃ」って思いが強かったんですね。自分が手話に関して、キャリアがあるわけじゃないから。でも今度は分からないことはすぐ忍足さんや先生に聞けるから。僕はろう者のみなさんと一緒にワークショップをやって一番心に残っているのは、なんてみんながエネルギッシュで楽しいんだ、明るいんだろうってことなんですよ。この楽しさをお客さんに伝えたい。ろう者の方は、「面白い」ってことについてはすごくエネルギーがあると思うんですよ。
そうですね。そう言ってもらえると嬉しいですねぇ。よくテレビドラマだと、どうしてもろう者が涙、涙で泣くシーンが多いんですけど、ろうの人ってあんな事では泣かないんですよ。
そうなんですか。
泣かないです。ドラマのようなシチュエーションでは泣かない。だからなんで暗いイメージになっちゃうのかなって、でもそれは分からないからなんだって。分からないから仕方のないことだから、では分かってもらうにはどうしたらいいか。私もテレビドラマなど私ができる範囲のなかで、それおかしいっていう時にはとことん主張してます。今回西川さんへのお願いなんですが、西川さんの笑いというかセリフで「これアドリブ? それともセリフ?」っていうものがたくさん飛び出してくるじゃないですか。聞こえる人が笑えるもの、でもろうの人がそれでは笑えない。ろうの人が笑っていて、聞こえる人が笑えない、そういう微妙なズレの時があります。でも手話にも言葉遊びがあったりするので、両方の立場で笑えるってものがあるはずなんですよ。それに是非挑戦してもらいたくて。
いいですね。それを是非1つ目標にします。
手話だけでなく、身体表現のなかでろうの人と聞こえる人が同時に笑ったら、もう本当に嬉しいですね。

[きき手/CSC東京 小林・松山・岩田・野口]
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