| 真柴あずき
お母さんが、15年ぶりにアメリカから帰ってくる。
スポーツ新聞記者・のぞみと、妹・あきらがその知らせを受け入れるには、あまりに長い時が経っていた。
「嘘だよ。帰ってくるわけないよ。」複雑な思いを抱える、のぞみ。
のぞみは更に、社会人ラグビーの監督・堀口が暴力事件を起こしたと聞く。
堀口の誠実な人柄を慕うのぞみには、どうしても信じられない。が、堀口はあっさりと自分の非を認める。
堀口の役に立ちたいと思ったのぞみは、ある決心をする−。
『四月になれば彼女は』は、私・真柴あずきが初めて脚本作りに係わった作品です。キャラメルボックスを旗揚げしてから8年目の春。偶然にも初日は、私の29回目の誕生日でした。
開演前、緊張と不安で掌がびっしょりだった私は、どうしても椅子に座る気になれず、客席の一番後ろで立って見ることにしました。
やがて芝居が終わり、暗転した瞬間に起こった拍手を聞きながら、
「ああ、きっと私はこの日のことを一生忘れないんだろうな」と思いました。
その予感は当たり、9年も前なのに、拍手の音はもちろん、自分が着ていた服まで覚えています。
生まれて初めての出来事というのは、いいことも悪いこともひっくるめて、強く心に残る気がします。
普段は忘れていても、思いがけない時に、ふっとその光景が浮かぶのです。
たとえば、照れ屋の父が初めて連れていってくれた映画。
年上のいとこが聞かせてくれたカーペンターズのメロディ。保護者抜きで友達と旅行した街。
子供を見ていて飽きないのは、彼らにとってすべてが「初めて」の連続だからかもしれません。
何にでも興味を持ち、何でも楽しもうとする。そんな姿を通して、私もまた、「これから」が楽しみに思えてくるから。
『四月になれば彼女は』を再演するのは、これが初めてです。
今度はどんな光景が私の中に残るのか、緊張も不安もやっぱりあるけれど、とても楽しみです。
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