トップページ

加藤昌史コラム「観終わってから読んでください」

演劇集団キャラメルボックス 製作総指揮 加藤昌史

新作『BREATH』、そして今年で私たちと同様にデビュー30周年を迎えたTUBEの新曲「Love In White」、いかがでしたでしょうか?

まず、そのエンディング曲のことについて書かせていただきます。
そもそもの始まりは、今年の2月頃。1994年にTUBEのギタリスト・春畑道哉さんの楽曲を使って『俺たちは志士じゃない』を上演した時にお世話になったTUBE所属事務所の方から電話が入りました。「今年、TUBEも30周年なんだけど、何か一緒にやらない?」と。
その方は舞台も好きでかなりご覧になっていらっしゃり、「今年は春・夏・秋・冬にシングルを出すから、冬のシングルの曲をキャラメルボックスで使ってくれないか」という願ったり叶ったりのお話でした。
その時に僕はポロリと「マライア・キャリーの"All I Want For Christmas Is You"とか、Wham!の"Last Christmas"みたいなクリスマスソングをTUBEが歌ったら大ヒットしそうですねぇ」と言った覚えがあります。
それから月日が経ったある日、「冬のシングル、2曲入りの予定だったんだけど、キャラメルボックス用にもう1曲作ってるから」と。
「……なんですかそれはっ?!話が違うじゃないですかっ?!(←いい方に)」と、胸はバクバク、膝はガクガクになってしまいました。
そして、届いた曲が「Love In White」でした。
お聴きの通り、マライヤでもワムでもない、TUBEそのもの。もう、横浜アリーナのウィンターコンサートでチューブライダースのみなさんがこの曲に合わせてペンライトを振っている姿が勝手にぶわっと僕の頭の中に広がり、涙がこぼれそうになりました。
前田さん、春畑さん、角野さん、松本さん、TUBEスタッフのみなさん、本当にありがとうございましたっ!!

夏の『時をかける少女』を上演した時に、初日に原作者の筒井康隆さんがサンシャイン劇場にご来場くださり、楽屋で一緒に写真を撮らせていただきました。筒井さんは僕たちの世代にとってはまさに神の領域の作家なので、もう、それだけで30年やってきてよかった、と思いました。しかし、今回この「まさかのTUBE書き下ろし新曲」という大事件までが起き、もう、ご褒美が多すぎて、来年からは慎ましくやっていかなければバチが当たりそうな気持ちです。

◇◇◇

さて。
 ここから先は、くれぐれも開演前には読まないようにお願いいたします。
 この「観終わってから読んでください」をWeb公開にしてから、観る前に読んでしまって後悔した、という方が続出しております。僕自身、台本を受け取るとラストシーンをまず読むという作家にとってはイヤなタイプなのですが、特に長年キャラメルボックスを応援してくださっている方ほど、この先は読まずに劇場に足を運んでいただくことをお薦めいたします。

 
  ◇◇◇  

今回の『BREATH』。いくつもの「愛の物語」で構成された作品でしたが、今公演が劇団結成30周年の最後を飾るもの、ということで、そのうちのいくつかに過去のキャラメルボックス作品の関係者が出てきていました。

今公演の最初の舞台は、東京・池袋の劇場「シアタームーンライト」の劇場事務所。この劇場の名前は、『ブリザード・ミュージック』(2001年)に出てきたものと同じです。

次に、そのシアタームーンライトで上演中だった作品は、タイトルこそセリフには出てきませんでしたが、『サンタクロースが歌ってくれた』。「奥さまと巡査のダンスのシーン」は、まるごと同じ台本でした。
 また、その「巡査」を演じていた俳優(三浦剛)の「長坂武史」に突然のプロポーズをする「柿本久里子」は、『広くてすてきな宇宙じゃないか』と『僕のポケットは星でいっぱい』に登場した女の子「クリコ」のその後。ちなみに、『ケンジ先生』にはおばあちゃんになったクリコが登場。名字は長坂、と名乗っていますので、武史と結婚した後は幸せになれた、ということのようです。

 

そして、その久里子の父で西川浩幸が演じた「ニュースキャスターの柿本光介」は、『銀河旋律』『広くてすてきな宇宙じゃないか』の主人公。柿本が「似ている」と言っていた妻「はるか」は、『銀河旋律』の初演では今回「新居浜文子」を演じた大森美紀子がやっていました。
 ちなみに、あまり本筋とは関係無いのですが、ダブルキャスト「Red」の久里子を演じた今年の新人・石森美咲は養成所時代の卒業公演の『広くてすてきな宇宙じゃないか』でクリコを演じました。

 

劇場職員・大浦明日美(林貴子/森めぐみ)の恋人で、柿本に対してスリ行為を行う男「小林不二雄」の祖父で「ハリマ電器の創業者・小林羅地雄(らじお)」は、『少年ラヂオ』の主人公。その「ハリマ電器」は、『キャンドルは燃えているか』でタイムマシンを開発した会社で、『ブラック・フラッグ・ブルーズ』では宇宙船を開発しています。

 

そして、菅野良一演じる「天使・風呂木(ふろき)」。本名は「プロキオン」と名乗りましたが、これは『クローズ・ユア・アイズ』でも語り部のような役だった天使で、『ウルトラマリンブルー・クリスマス』にも出てきた男でした。

 

……と、このように、30年間のキャラメルボックスに出てきた人物や組織が散りばめられた「総集編」のような作品だったわけですが、それら全てをご存知の方はほぼいらっしゃらないと思われますので、わからなくても何も問題がないように、『BREATH』は作ってあるつもりです。

 
 

お楽しみいただけましたでしょうか。

 
◇◇◇

結成30周年は、今公演で終わります。しかし、31年目の第一弾がすでに発表されています。
 今公演で劇場支配人「亀岡」を演じた阿部丈二が主演する『きみがいた時間 ぼくのいく時間』の再演と、その劇中に出てくるタイムマシン「クロノス・スパイラル」にまつわる新作『フォーゲット・ミー・ノット』の二本立て。しかも、その2時間作品2本を、14人の出演者たち全員が両方に出演してお届けいたします。
 これは、劇団始まって以来の挑戦です。
 この劇団は毎公演挑戦し続けるのが当たり前なので、「挑戦」や「チャレンジ」という言葉はもう使わない、と心に決めていたのですが、今回のこの挑戦は劇団史上最も過酷であると考え「ダブルチャレンジ」と命名しました。ただし、やる側は過酷でも、両作品を観る人にとっては時間を置きつつ同じ主人公「クロノス・スパイラル」を巡る4時間の物語をこれ以上無い統一感でご覧いただけるというわけです。

[2015.11.17. Katoh Masafumi]

BREATH TOPへ戻る