トップページ

Column 観終わってから読んでください。

演劇集団キャラメルボックス 製作総指揮 加藤昌史

ついに、演劇集団キャラメルボックスを結成してから30年目の年が始まりました。

今回の『クロノス』は、梶尾真治さんの小説シリーズ『クロノス・ジョウンターの伝説』の中の「吹原和彦の軌跡」を原作とした作品で、2005年の冬に初めて上演させていただきました。その後このシリーズは、「布川輝良の軌跡」を『あしたあなたあいたい』、「鈴谷樹里の軌跡」を『ミス・ダンデライオン』、「きみがいた時間 ぼくのいく時間」をそのままのタイトルで、「野方耕市の軌跡」を『南十字星駅で』というタイトルで、5年間にわたって上演いたしました。

このシリーズ1本目の『クロノス』。キャラメルボックスが、原作がある作品を堂々とお借りして上演したものとしては、2004年冬の北村薫さん原作の『スキップ』に続く2本目でした。実はそれまでの作品は、完全なオリジナルもあれば小説や映画を下敷きにして成井が翻案したものもありまして、どちらかというと後者の方が多かったのです。が、北村先生に快諾をいただき、なおかつできあがった舞台についても好評をいただいたものですから、「じゃぁ、梶尾先生にもお願いしてみよう」ということになり、ワクワクドキドキしながらやらせていただいた、というのがこの作品でした。

その後の5年間のキャラメルボックスは、柳美里さんの『雨と夢のあとに』、宮部みゆきさんの『サボテンの花』、恩田陸さんの書き下ろしの『猫と針』、いしいしんじさんの『トリツカレ男』、恩田陸さんの『光の帝国』、東野圭吾さんの『容疑者χの献身』、と有名作家の皆さんから許諾をいただいて小説の舞台化をしてくることができました。

そして、それらの舞台成果が認められて(と、僕は思っています)、なんと2011年春に、1956年に書かれて今でも日本中のSFファンに愛されているタイムトラベル小説の不朽の名作、ロバート・A・ハインラインの『夏への扉』の世界初舞台化に成功。同じ年に重松清さんの『流星ワゴン』、その翌年にはマニアックなSFファンの至宝の作品であるオースン・スコット・カードの『無伴奏ソナタ』をこれまた世界初舞台化、そしてこれこれまたまたSF小説の歴史に残る傑作『アルジャーノンに花束を』も上演。続いて有川浩さんの書き下ろしの『キャロリング』、藤沢周平さんの『隠し剣鬼ノ爪』と『盲目剣谺返し』、東野圭吾さんの『ナミヤ雑貨店の奇蹟』、内田けんじさんの『鍵泥棒のメソッド』、と、怒濤のような名作舞台化を続けてくることができたのです。

ちなみにこれらの作品の選択は、脚本を書く成井が年間300冊以上の本を読んで、数百本の映画を見て、その中の1本が舞台化したいと思えるかどうか、という究極の選択で行われています。つまり「原作ものの舞台化」というと、なんらかのタイアップとかをイメージされる方がほとんどだと思いますが、キャラメルボックスの場合はそれは全く無く、純粋に成井がやりたいと思うかどうか、にかかっています。もしタイアップっぽく見えるとすると、作品が決まってから我々製作部が交渉して一緒にやっていくことになった、というパターンです。

『無伴奏ソナタ』もそうだったのですが、これからの夢は、アマチュア時代や劇団活動初期に「元ネタ」としてお借りしていた有名作品や「これは絶対許諾は下りないだろう」と決めつけていた、超有名だけど大好き、という作品までも、堂々と許諾を得て舞台化していくことです。どれがそれ、とは今は申し上げられませんが、2011年の震災の後に「これからは切り札から切っていきます」と誓った通り、当たって砕け続けながらもチャレンジしていきたいと思います。

◇        ◇        ◇

長々と書いてしまいましたが、つまり『スキップ』とこの『クロノス』は、その後10年間のキャラメルボックスにとって、成井豊と真柴あずきのオリジナル作品に続く劇団の第三の柱としての「原作もの」が確立するきっかけとなった作品だったのでした。

劇場ロビーで販売中の「トーク&フォトブック」の巻末に仲村和生プロデューサーが書いている通り、我々がクロノスシリーズを上演し、それを原作者の梶尾真治さんがご覧くださった後に書かれた梶尾さんのクロノスシリーズ新作小説にキャラメルボックスでの設定が登場したり、それをまた舞台化したらまた次の小説にその設定が出てきたり、という、おそらく過去に例は無いだろうと思われる小説と舞台の壮大なコラボレーションが行われてきました。

そしてその結果、今回はなんとそのシリーズの新作を、梶尾さんの許可はいただいているとはいえ、成井豊がオリジナルで書き下ろしてしまう、という暴挙(?)に出ました。それが、今回並行して上演している『パスファインダー』。こんなことを許していただけたのも数々の積み重ねの結果で、30年もの間、劇場に足を運んでくださるお客さんたちに支えてきていただけたからだな、と感謝しています。

◇        ◇        ◇

かつて、結成10周年や15周年、20周年、25周年、という節目の年はお祭り気分なことをいろいろとやってきました。しかし、今年は違います。今まで積み重ねてきたことをちゃんと丁寧に研ぎ直してお届けし、そしてまたこれからのキャラメルボックスを成長させていくための作品選びとキャスティングをした万全の舞台を、浮かれずに作っていく覚悟です。

『クロノス・ジョウンターの伝説』の次の作品は、成井豊のオリジナル作品『カレッジ・オブ・ザ・ウィンド』。初期キャラメルボックスのゴーストものの代表作を、成長著しい『クロノス』に出演中の入団7年目・原田樹里をセンターに据えて盤石のキャスティングでお届けいたします。そして夏は‥‥‥今公演が終わる頃には、お知らせできることになっているかと思いますので、決して目を離さないでください。

いや、今年は毎日目が離せない活動をしていきますので、ぜひ僕のツイッター( @katohmasafumi )をフォローしておいていただけると幸いですっ!!

ではまた、劇場で!!

[2015.2.19.Katoh Masafumi]

サイトトップへ戻る