「私の街でも公演をやって!!」
というご要望について。

キャラメルボックス プロデューサー 加藤昌史

 連日私のところにいただくメールの中で、圧倒的に多いのが、このご要望です。特に、「今年はなんで福岡は春しかやらないんだ?!」「名古屋を忘れたのか?!」「札幌はいつっ?!」などが、非常に多いのです。
 そこで、あえてここに1ページを設けて、そのあたりの事情についてご説明させていただきます。


(1)関東・関西で手いっぱい。

 96年、97年と、キャラメルボックスの公演は数公演を除くとほとんどの東京・関西公演で、前売券が即日完売状態です。なにしろ「お膝もと」である東京や神戸で「観たいのに観られない人」が山ほどいる、という状況をなんとかしないといかん、と考えています。

 もちろん、全国に「ナマのキャラメルボックスの舞台を観たい!!」とおっしゃってくださる方達がいらっしゃるわけで、その状況もなんとかしなきゃいかん、とも思います。

 しかし、役者も人間です。ご覧になっていただいた方にはご理解頂けると思うのですが、キャラメルボックスの芝居はものすごい体力と集中力を必要としますので、現在のところ、1公演の合計ステージ数は50ステージが限界だと考えています。

 かと言って、もっと大きいホールでやればステージ数を減らせるからいいかというと、そうでもないと思うのです。商業演劇やミュージカルのようにマイクを使ってしまっては、キャラメルボックスの芝居の魅力は伝わらない、と考えるからです。僕たちにとって、ベストのホールは、東京ではサンシャイン劇場(900人収容)、関西では新神戸オリエンタル劇場(630人収容)、なのです。

 そして、大道具・照明も、ご覧の通り大がかりです。1会場で初日を明けるために、2日半を使います。かつて一番たくさん公演をやったのが、1994年の『ブリザード・ミュージック』。神戸→新宿→池袋→札幌→盛岡→仙台と、実に6会場で上演したのですが、この移動で、お恥ずかしいことなのですが、みんなボロボロになってしまいました。それが、芝居をやるための「ボロボロ」ではなくて、「仕込んでバラして移動しての繰り返し」によるものでした。そして、「これ以上やったら楽しくなくなっちゃう!!」ってところまで行きかけました。

 そのツアーをやって、「東京、関西と、あと2会場」というのがキャラメルボックスにとってクォリティを保てる最大の会場数だな、と悟りました。

 あとは、役者たちが60回、70回とやれるように、もっともっともっと体力をつけていく(今現在でもフルマラソンを走りきる体力の持ち主がいっぱいいるわけですが)しか方法はないな、と思います。

 ただ、そうなった場合、今度は年間の公演数が現在は本公演3本+アナザーフェイスもしくはファンタジックシアターもしくはチャレンジ公演1本、というペースでやっているのが、どれか一つがなくなる、ということになります。

 これもまた、ジレンマです。

 僕たちには、やりたいことが山ほどあるので、死ぬまでにそれをやり遂げるには年間4公演、というペースを崩したくない、というのもあります。

 しかし、やむを得ません。なんとか、「観たい」とおっしゃってくださる方みんなに観て頂けるような特大(特長)の公演ができるように、また、再びいろんな都市で公演をできるように、がんばりたいと思います!!


 

(2)ホールが取れない!! 

 キャラメルボックスの公演は、まず東京、関西の劇場のスケジュールを押さえるところから始まります。なにしろ長期の公演ですので、劇場との打ち合わせは2年前ぐらいから始まっています。次に、それ以外の都市での公演の会場を探します。つまり、東京、関西の公演の前後、もしくは間の、少ししかないスケジュールに合う会場でないとできないわけです。

 そこに、名古屋公演ができない事情があります。名古屋にあるホールの中でキャラメルボックス公演ができるキャパシティを持っている(600〜1000人収容)ホールは、すべてが公共のホールです。で、そのすべてが「地元優先」のため、よそ者のキャラメルボックスが公演をやろうと思っても、僕たちがやりたい期間はもう地元の方に取られてしまっている、ということになってしまうわけです。

 福岡は、「ピクニック」というプロモーター(取次をしてくれる会社)さんが、万難を排してなんとかしてくださっているために、公演をやることができています。

 札幌は、演劇鑑賞協会のご協力でホールを押さえるのですが、キャラメルボックスの公演ができる会場は札幌には「教育文化会館」しか、現在のところはありません。「道新ホール」では、キャラメルボックスのセットは入りません。セットどころか、スピーカーも入りません。そういうわけで、教育文化会館が取れないと、自動的に札幌公演はできなくなってしまう、というわけです。


(3)赤字が出る!!

 地方公演をやる場合、キャラメルボックスでは「東京公演と全く同じセット、キャスト、スタッフ」というのがポリシーです。よく、有名な劇団の地方公演で、ツアー用の簡易版のセットをもってまわり、キャストも二線級、演出家は同行しない、ということが多々あるようです。ましてや、前説の人なんかいません(もともといない、という説もありますが)。

 「でも、来ないよりはまし」という考え方もあるかもしれませんが、僕たちは、このメンバーでみんなで作るからキャラメルボックスの芝居である、と考えます。

 ですから、だいたい50人の人間と、11tトラック2台に満載の荷物と機材、というのが地方公演のために移動するわけです。

 で、お手元に電卓がありましたらちゃちゃっと計算してみていただきたいのですが、これだけの人員が新幹線や飛行機に乗って移動して、ホテルに宿泊して、ご飯を食べるのですから、すんごいお金がかかりますよね。

 ちなみに、1995年に『また逢おうと竜馬は言った』を上演したとき、「龍馬の話なんだから土佐でやらねばなるまい!!」と気合いでやった高知公演では、なんと350万円の赤字を出してしまいました。もちろん、その赤字分ぐらいのパワーとか、いろんなものを高知でいただくことができたので、あんまりショックは受けていないのですが、そんなお金があったら南塚なんて2年ぐらい遊んで暮らせてしまいます。また、『ブリザード・ミュージック』での北のツアーも、「宮沢賢治の話だから岩手でやるべさ!!」と行ってしまい、似たような目にあってしまいました……。ですから、『俺たちは志士じゃない』の再演では、「岩国でやろう!!」という話は、みんな心の中では思っても、口に出す者はいませんでした……。

 つまり、何が言いたいかといいますと、「気持ち」や「気合い」はある。でも、それだけで公演をやってしまうと、役者が舞台で食える日がどんどん遠のいていってしまう。いいのかそれでっ?! ということです。全国の、いろんな都市に行って、いろんな人と会えるのは、本当に楽しいし、刺激になります。が、それでビンボーになっていってしまっては、演劇の置かれている状況は変わらないと思うんですね。やっぱり僕は、西川浩幸に「ポルシェに乗ってるせつないいいひと」になってほしいんです(その前に免許を取ってね)。だって、やっぱり小学生の「なりたい職業ベストテン」に「舞台俳優」が入ってくるぐらいじゃないと、いつまでたったって「好きなことやってるんだから貧乏でもしょうがないよねー」なんていわれ続けるわけでしょ。そんなことじゃ、本当の才能はみんなやむをえず「お金が儲かる業種」にいっちゃうじゃないですか。

 キャラメルボックスをいつもご覧くださっている皆さんは、「ナマの舞台」の面白さ、というものをわかってくださっていると思います。が、それを継続していくことができているのは、4万人近いお客さんが1枚4000円のチケットを一人一人が買ってきてくださっているからなのです。そのおかげで、役者もなんとか食えています。もちろん、まだまだバイトをしている奴もいますが、西川君はMacintoshを買えるまでになったのです。

 僕は、「生活費はテレビで稼いで、そのお金を持ち出しで舞台をやる」という時代を終わらせたいのです。「舞台で稼いでいるけど、頼まれたらテレビも出る」なんてゆーのが、やっぱりカッコイイじゃないですか。うーーん、カッコイイ。「ポルシェに乗ってるけどいいひと」(まず免許を取ってからね)なんて、サイコーだと思うんですけど。

 というわけで、話がずれましたので元に戻します。
 地方公演は、だいたい、1会場で最低2000人のお客さんが来てくれないと、赤字になってしまいます。

 福岡でさえ、『サンタクロースが歌ってくれた』ではやっと3000人を超えましたが、それまでは2000人入っていなかったので、赤字だったのです。

 やはり、そう考えると、劇団四季のように、こつこつと東京や大阪で10万人規模のお客さんを呼んで、他の都市でやる時は自分たち用に劇場を建てて長期公演をする、というのがベストの行き方なのでしょう。……そうなりたい、というわけではないんですけど……。


■というわけで。

 とりあえずキャラメルボックスでは、「まず東京と関西で、タカヤが出なくても5万人」という目標をクリアするまで、その2都市以外での公演は年に1〜2回、というペースでやっていくことになると思います。

 その間は、何万円もかけてわざわざ東京や関西に観に来てくださる方々のために、チケット代の10倍は楽しめる芝居をやります。

 また、ビデオのできるだけ早い時期でのリリース、ということも心がけていきます。CS放送の「シアターテレビジョン」での、「CaramelBoxTV」も続けていきます。インターネット生中継も、権利関係がクリアできる公演に関してはどしどしやっていこうと思っています。

 キャラメルボックスが、本当の意味での「劇団としての体力」がつくまで、しばらくお待ちください。

 東京・関西に観に行かれない皆さん、本当に申し訳ありません。


[2000.8.6. Masafumi Katoh]